震災前、専門家たちは、日本の退職者の数が増えれば、個人貯蓄率はマイナスになり、日本政府は債権コストの上昇の対応に追われるだろうと警告していた。これらは今後さらに悪化するに違いない。日本のインフラ再建が進めば、民間部門は現在縮小している貯蓄を大量に切り崩し、また、日本政府も支出を増やさなければならなくなる。一部の支出は増税などによりまかなうと考えられるが、多くの支出はやはり債券の発行に頼らざるを得ない。さらには、国外の投資家に向けて債権を発行する可能性も高い。国外の投資家は高い利率を要求するだろうが。
以上の要因が合わされば、貯蓄率の低下、金利の上昇、公共部門による融資が困難になるなどの状況が悪化する。万が一、日本銀行が政府の融資に介入すれば、日本政府の債務は貨幣化されてしまう。歴史的に、この方法はインフレを加速させることが分かっている。また、投資家が機に乗じて円を借り入れ、他の資産への投資で利益を得るようになれば、新たな資産(特に大口商品と株式)バブルの形成を刺激してしまうだろう。
大口商品価格の上昇は間接的に中東及び発展途上国の社会の混乱に影響を与える。その混乱が主要産油国にまで波及すれば、原油価格は一層上昇することになり、先進国は再び衰退し始めるだろう。これらすべての状況の背景にあるのは、貿易のアンバランスと巨額な債務である。