日本企業の最大の敵は自分自身
まず疑問視されたのが日本企業の国際化戦略だ。長年、日本企業は研究開発能力を自身最大の武器とみなし、それが海外に流出し、自社の競争優位性が低下することを恐れた。現在も多くの企業が最先端の高付加価値製品を日本に残し、低利益製品の生産を海外に移転している。
一つの会社だけなら、この戦略は効力を発揮するだろう。しかし、それを全国民経済で行うとなると、それが経済発展と雇用の安定につながるかは疑わしい。特に、中国など新興経済国が技術力を向上させる中で、この戦略が日本固有の競争優位性の維持につながるかどうかはさらに怪しい。
「日本は経済が低迷し、研究開発コストも高い。一方、新興経済国は経済が急成長し、研究開発コストも低い。したがって、研究開発リソースを日本国内に集中させようというのは、賢い選択とはいえない」。マッキンゼージャパンのピーター・ケネバン氏はこのように述べた。
積極的に海外進出を果たす企業とそうでない企業では、業績に明らかな差がある。約50%の自動車を日本で生産し、日本での販売台数が輸出台数よりも少ないトヨタは、2011年度の純利益が前年比50%減になる見込みである。一方、国内での生産がトヨタの4分の1である日産の純利益は前年比9%減にとどまる見込みである。
日本の大手金融サービス会社、オリックスの宮内義彦会長は、これまでずっと高度に保護を受けてきたサービス業の自由化を提唱してきた。製造業に関して、宮内会長は日本に残して衰退させるのではなく、生産を海外に移転して発展させるべきだとの見解を示している。宮内会長は、「日本企業は世界に出ることでさらに強くなる。国内だけで活路を見出そうという企業は生き残れない」と主張した。