——今回の中米貿易摩擦から、1980年代の日米貿易摩擦を想起した人も少なくないと思います。二つの貿易摩擦にはどのような共通点と相違点があるでしょうか。今回の中米貿易摩擦で、日米貿易摩擦を教訓にすべき点はありますか。
江原 共通点というより相違点が際立っています。共通点としては、米国の都合が全面的に押し出されている点ですが、ただ今回は、米国大統領の都合が優先されている点と米国国民、議会に反対の声が多いところは相違点と言えます。このほか相違点としては、
1、80年代の日米貿易摩擦は日本と米国の2国間にほぼ限定されていたが、現在の中米貿易摩擦は、影響が多国間に及んでいること
2、日本と米国は同盟国で特殊な関係にあり、日本側が対米輸出の自主規制(乗用車等)を行ったが、中国と米国は大国関係にあり、中国は交渉において、当時の日本に比べはるかに対等な関係にあること
3、80年~90年当時は現在のように世界的なサプライチェーンがまだ形成されていなかったことから、世界経済に対する影響が今より限定的であったこと
4、日本企業が海外進出する大きなきっかけとなったが、中国はすでに世界第2位の対外投資国・外資導入国となっており、今回の貿易摩擦では、多くの国が中国と利害を共有していること
5、目下中国は世界最大の発展途上国であり、世界第1位の貿易大国であり、さらに世界120カ国が中国を主要貿易国としているなど、中国の世界貿易における影響力、今回の貿易摩擦の世界的影響が当時よりはるかに大きいことなどが指摘できます。
日本は80年代から90年代にかけ、貿易黒字減らし策として積極的に輸入促進策を実施しました。輸入促進策としては、予算的措置、輸入促進大規模展示会の開催、対日アクセス調査(日本と各国の規制等の比較)、専門家の海外派遣(セミナー・ワークショップの開催、対日輸出促進に関する生産・デザイン指導、当該国からの視察団の受入・企業訪問の実施など)などによる、日本市場で歓迎される製品情報の提供、製品づくりの技術指導、対日輸出機会の創出支援などを実施してきています。