——中米貿易摩擦は持久戦になると思いますか。今後も米国が貿易保護主義政策を改めない場合、世界経済にどのような影響を与えるでしょうか。
江原 今回の中米貿易紛争で利益を得る国・地域、漁夫の利を得る国・地域はありません。WTOルールによらないアメリカファーストは、世界貿易の発展への挑戦とする報道や識者が少なくありません。このまま中米貿易摩擦が長引けば、そのマイナス影響は、米国の方が大きくなる可能性か高いとみられます。中米貿易摩擦といわれますが、現実はますます米国対世界の貿易摩擦となってきています。この点、米国の意図に反した結果を招来し、世界経済のガバナンスの形成で米国の影響力が低下することになるとみられます。
ただ注意しなくてはいけないのは、中米貿易摩擦なのか、中・トランプ大統領貿易摩擦なのかという視点です。トランプ政権の発動した今回の措置を歓迎する米国民、米国企業は多くないのが現状で、また、中国は言うに及ばず、EU、カナダ、メキシコ、ノルウェー、インド、ロシア、スイスなどが、今回の米国の発動した措置に対してWTOに提訴していることから、米国はいわば世界を相手に「四面楚歌」になる可能性が否定できないでしょう。
7月1日、中日印とASEAN(東南アジア諸国連合)など16カ国が東京でRCEP(東アジア地域包括的経済連携)第5回閣僚会合を開いた。会議で発表された共同メディア声明では、目下の世界貿易は反グローバリズムへの挑戦という背景の下、早期にRCEPによる交渉を終えることが重要だとされた。