■エンタメを支える層への支援を
周 そういう意味では、コロナで苦労しているエンターテイメント産業の下支えを如何に支援するかが大切です。最近NHKでニューヨークの日本人ジャズミュージシャンの番組を見ました。コロナ禍で仕事がなくなり苦労をして大変だったが、ニューヨークはミュージシャンを応援するため音楽家にかなり補助金を出したようです。
白井 ぴあのシンクタンク、ぴあ総研の数字でライブエンターテイメント市場規模の推移を見ますと、さかのぼって2011年は3,061億円でした。2019年までの約8年間で6,295億円と倍になった。大勢の方が様々なアーティストの全国ツアーを見に行くようになった。ライブをしたいけれど小屋、つまり舞台、ステージが足りない状態でした。
それが2020年はコロナの影響で同3月から公演が全部中止になり、1,106億円へと一気に縮まった。
エンタメ業界は大打撃を受けました。興行が中止されぴあの仕事は払い戻しばかりという状態でした。興行中止で一番困るのは誰か。チケットぴあも困るが、出演アーティストも困る。アーティストは人によって違いますが、大きな事務所に所属し給料制の人もいれば出来高でやってる人もいる。但、実は一番困るのは裏方です。照明、音響、舞台美術など裏方でエンタメを支える人々は、会社組織であってもその小さな会社を自分で経営していると、興行が中止になれば仕事が全くなくなってしまう。
周 音楽産業の厚みは実際裏方にある部分が大きい。コロナ禍の経済対策として日本は、GOTOトラベルキャンペーンは行ったものの、エンタメ産業の裏方の支援は行き届いていないようです。
白井 海外からの日本入国者数は2019年で3,188万人が、20年になると412万人、21年は9月までの累計で1万7,700人くらいです。オリンピックが普通に開催されていれば4,000万人は突破したとみられています。
日本では新型コロナ禍による旅行人口減少に対してGOTOトラベルキャンペーンをしたが、エンタメ産業の人に出したお金は極少です。持続化給付金で、事業を継続するための給付金を会社には最大で250万、最小で100万入れても金額はまったく足りない。国民全員に10万円出したが興行を下支えする人たちへの政府補助は圧倒的に少なかった。とくにエンタメを支えていたミュージシャン、組織に属さず自分でコンサートをやる人たちに対する補助は、最初の10万円と、持続化給付金名目のものしかない。
ぴあが中心になり、エンターテイメント協議会を作り足並みを揃え、2020年から政府にエンタメに対して補助をすべきだと随分言ってきた。政府からするとなかなか線引きが難しいとして、一律の補助以外の個別補助をすることが現段階では何一つない。個々の芸能人、照明の人、音響の人、舞台を作る人は大変苦労した時期だったと思います。
周 その意味ではいかに政府の支援を引っ張り出せるかについて、業界を代弁できるエンタメのリーディングカンパニーとしてのぴあの役割は大きいですね。