■デジタルの力をエンタメに
周 コロナ禍で、オンラインライブが伸びましたね。動画配信でONE OK ROCKのステージを見ましたが、ZOZOマリンスタジアムでのコンサートをオンラインライブするやり方が大成功しました。
白井 エンタメ業界の売り上げがものすごい勢いで減る中、光が出たのが、2020年の有料オンラインライブでした。一気に448億円の市場に急成長した。コロナの影響で2020年1月〜3月がほとんどなかった有料オンラインライブが徐々に出てきて10月〜12月にかけて373億まで稼いだ。リアルな興行ができずお客さんも呼べない中、横浜アリーナなど大きな会場を使い照明、舞台設計、音響の人も動員し、さもお客さんがいるような形でやるものも出た。ドローンを飛ばして撮影するようなことをやりながら映像配信を始めた。それが爆発的に当たりました。有料オンラインライブの客層は圧倒的に20代の女性、男性も20代です。
周 ソニーの「THE FIRST TAKE」もかなりうまくいきましたね。ライブ業界のDXが一気に進むようになった。
白井 業界にとってこれから大事なのは、DX、デジタルトランスフォーメーションをどう作り込むかだと思う。
野球もコンサートもオリンピックもリアルの方が良いに決まっている。でも例えば、横浜アリーナの2階席からアーティストを見るのであれば、テレビや動画で見るのとほとんど変わらないと感じるかもしれない。1万円ぐらい払ってナマで見れば臨場感は違うが、家にいてオンラインで見れば、3500円で済む。スポーツもテレビで見る方が遥かに見易く、解説もついてわかりやすい利点がある。
周 オンラインライブの将来は、リアルライブでは出来ない見せ方を如何に引っ張り出すのかにかかってくる。
白井 DXが進み、携帯が5Gになり、非常に多くの伝送容量が稼げて、より鮮明な映像を携帯でもテレビでも見ることもできる時代になる。DXはもっと進化させなきゃいけない。リアルを超えるDXは作れないのか。リアルの映像を、ドローンを飛ばして、アーティストの正面まで撮って、ドアップで撮るってカッコいいと思った先を、次はデジタルトランスフォーメーションで5Gの力を使ってどう展開するのか。
例えば乃木坂46をテレビで見る限りは、一人をずっと見ているわけはいかない。自分の好きな一人だけを追いかけたいとすれば、これはDXじゃないとできない。ライブでは一番前の席を取ればいいが、そうでなければ客席から遠すぎて見えない。それを、乃木坂46のカメラDXができて、ドローンから自分の好きな映像だけを選んで見るために5GとDXの力を使う。そうした工夫は、興行側もまだまだ展開できる。
どうしても私はリアルが一番だと言ってしまいがちです。映像がリアルを超えるときは来るのでしょうか。携帯の性能がよくなりパソコンも通信の容量が大きくなることによって、時代は何年後かに変わっていくだろうし、変わっていかなければならないとは思っていますが。
周 いままでとは違う見方が求められる。リアルとオンラインとの棲み分けが必要です。さらに、相乗効果の可能性もあります。例えば映画とOTTの関係では、映画としての「鬼滅の刃」が爆発的に売れた一つの理由は、ほぼ世界中のOTTプラットフォームでアニメ「鬼滅の刃」をことごとく流したから。そのやり方は、後の映画版と大きな相乗効果を生んだ。ライブの場合も、オンラインは今後面白い見せ方をしてリアル作品との相乗効果を作っていくことになるでしょう
白井 いま日本映画はこの方式が多く導入されている。テレビでまず連続放映し、続きが映画になる。たとえば、テレビ朝日の「相棒」が20シーズンも続き、その都度映画も出来てヒットする。中身そのものは特別に映画だからといって規模感は大きくなっても、仕掛けは変わっているわけではないのに映画も当たる。
周 情が移ることを意識する作戦です。テレビをきっかけに見る側が主人公に情感を得ると、映画も見たくなる。それで映画も当たれば、数字的には食べられるということで、作戦としてはいいですね。
これからデジタルの力でエンタメの新展開が大いに期待できます。
「中国網日本語版(チャイナネット)」2022年2月17日