慶応大学の東アジア経済問題の専門家・渡辺幸男教授と駒形哲哉准教授は、長年にわたり中国の経済問題を洞察し、現在、中国が発展の過程で遭遇している様々な問題について、日本と参照することで、独自の結論を紹介している。
独特な中国経済
――中国経済は高度成長を遂げているものの、同時に多くの問題が抱えています。当面の中国経済に対する印象について。
渡辺 私が小さいころ住んでいた川崎はちょうど京浜工業地帯にあって、そこには当時、機械製造の中小企業が集中していました。私の家も実は、製造業に従事していました。中国で感じた印象ですが、若かったころの私の町の活力、力強さと実によく似ていますね。
中国の中小企業は技術開発、市場開拓の面で、非常に積極的で、競争意識も強い。それに、中国で調査研究を初めて10年になりますが、こうした競争・開拓の精神は少しも衰えていませんね。
――日本経済の当時の状況は、中国の今と似ていますか。
渡辺 日本の大企業は中国と違って、戦後も依然として幾つかの大財閥による枠組みをほぼ維持していました。例えば三菱に三井、住友など。高度成長期には、こうした財閥企業を中核に、周囲の中小企業をけん引して、ピラミッド型の産業構造が形成されました。一方、中国にはこうした中核となる大企業はありませんが、私は、それは必要ないと考えています。中国の製造業が成長する路線は日本と違うからです。
駒形 以前、学界では一般に、中国やインドのような発展途上国は、経済が飛翔し始めると必ず、先進国がかつて発展した道に沿って歩む、と考えられていました。しかし、10年ほど前から気づいたのですが、中国は完全に従来の道に沿って発展しているのでは決してなく、現在のインドもそうで、いずれも自らの特色のある道を歩んでいるのです。国情が異なり、時代も異なるからです。
一部の分野で、中国は日本に追いつきつつあり、追い越してもいます。しかし、日中両国の経済発展の形態は同じではありません。中国は一種の「延長型」の発展状況にある、と言っていいでしょう。大量の低価格商品、例えばテレビや冷蔵庫、エアコンなどの家電、自転車や一部の乗用車はまさに大量の中・低消費者のニーズとレベルに対応したものであって、しかも高級輸入商品との競争は大きくはありません。ですから、現在の中国経済は日本の高度成長期とあまり比較することはできません。
中国の経済発展には独特の内的規律があります。ですから、他国の経験や教訓を参考にすると同時に、自らの独特性を研究・理解することにも注意を払う必要があります。
「中国網日本語版(チャイナネット)」 2010年4月26日