次に、良性の相互作用がある安定した労使関係を築いたこと。
日本の会社は一般的に終身雇用制と年功序列の給料制度を採用しており、勤続年数によって給料が大きく影響され、仕事の業績は年末賞与などの別の収入に反映されることが多い。よって、会社に長く勤めれば、収入はしだいに増えていくのである。このしくみによってサラリーマン層は収入の面で期待することができるだけでなく、穏やかで安定した気持ちももたらされる。
日本の会社の労使間には比較的円滑な相互関係があり、会社と労働組合は賃金水準や福利厚生、さらには会社の発展方向などについて協議を行うことができる。毎年2、3月は「春闘」の時期。この労働運動は日本労働組合総連合会が組織する。労働者側は賃金や待遇改善の要求を提出し、会社側は経団連や厚生労働省が発表する賃金や物価の変化などに基づき、自社の経営状況に照らし合わせて給料を調整する。これは、労使双方の闘争のように見えるが、実際は双方が賃金関係で歩調を合わせる固定の手段になっており、労使関係を和らげるだけでなく、「適時」と「適度」のバランスがとれたサラリーマン層の所得増加を実現している。
このほか、医療や教育、住まいの面でも中流階級の後顧の憂いをなくしている。
日本は医療保険が全面的に行き渡り、その保障水準もかなり高い。公立病院での一般的な治療であれば被保険者の負担はごくわずかだ。教育の面では、公立学校の高校以下はほぼ無料、国立大学の学費も比較的安く、奨学金制度も広く行き渡っている。
住まいの面では、日本は「地価がものすごく高い」ことで有名だが、実際のところ、東京などの大都市の中心部を除けば、大部分の地方の不動産価格は国民が受容できる範囲内である。特に、政府は都市の交通機関の整備に大量の資金を投入しているため、都市周辺や近郊から中心部への通勤は便利かつ快適で、都市周辺地域で住宅を購入すれば、経済的負担もそんなに大きくない。記者が東京で接触した何人かの日本人は、30歳前でも、自分の収入で2LDKや3LDKの住宅を購入し、通勤時間も30分を超えない人がほとんどである。つまり、日本の中流階級は医療や教育面の保障を受けられると同時に、住宅購入の「悪夢」からも抜け出しているのだ。