写真:小さな工場でホタテの加工に従事する女性
壊れた家屋は立て直せばよい。しかし家族や友人を亡くしてしまった心の痛みが癒されることは永遠にない。生存者たちはそれを口にはしないが、彼らの表情から痛いほど伝わってくる。
40歳過ぎの佐藤雅裕さんは、女川町災害本部総務課参事だ。彼の17歳の一人息子は津波にのみこまれた。震災後、彼は毎日仕事に没頭することで息子のことを思い出さないようにしている。
5日の正午、記者は女川町第二小学校に置かれた女川町臨時町役場を訪れ、翌日の須田義明町長への取材を申し込んだ。その時、偶然にこの佐藤さんと知り合ったのだった。
最初は総務課長と面会する予定だったのだが、不在のために現場のスタッフが佐藤さんを呼んだ。片隅で黙々と仕事をする男性がスタッフの声に応えて立ち上がり、私のところに来た。それが佐藤さんだった。