作業員の待遇差と劣悪な作業環境
潜入期間中、鈴木氏は他にも多くの裏事情を発見したという。
去年8月、福島で作業に当たっていた鈴木氏は他の作業員同様、密閉性の高い防護服と顔全体を覆う防毒マスクを着用していた。しかし、季節は夏、ほとんど毎日のように誰かが熱中症になったが、次の日にはまた作業に戻っていた。シャワー等浴びられるはずもなく、皆「我慢」するしかなかった。鈴木氏によれば、原発内の温度表示計は全く当てにならず、誰もそれを聞かなかった。作業中にマスクを外すことは規定違反だったため、どれだけ喉が渇いても水も飲めなかった。1時間も作業すれば、体中がまるで燃え盛る炎に包まれているような感覚だったという。作業終了後は、誰がチェックをすることもなく、上司に作業完了を報告するのみだった。
鈴木氏によれば、作業員は過酷な環境の下で酷使され、誰も彼らの休憩について考えてはくれなかった。体調の悪さを訴えるものがいる場合も、東電の医師は気休め程度に風邪薬を渡すのみだった。
また、原発の正社員は、ヤクザが募集した作業員たちよりも良質な被爆防護服と設備を与えられていた。某作業員によれば、彼らのフィルターマスクは基準に適合したものではなく、もしマスクにぶつかるようなことがあれば、放射能粒子が中に入りこみ、皮膚と接触するのだという。
そして、作業員が身につける放射量測定器バッヂも形だけのものだったという。正社員たちが使用する放射量測定器は、安全レベルを超えると警報が鳴るようになっている。しかし、鳴り止むことがなかったため、「みな電源を切るかその辺に放り出すかして、作業を続けていた」と鈴木氏は言う。
ヤクザからの嫌がらせは受けていない