筆者は今年の元旦に、英国の主要紙『デイリー・テレグラフ』に掲載した寄稿文の中で、安倍首相の靖国参拝という間違った行為を強く批判し、日本の軍国主義を小説『ハリー・ポッター』のヴォルデモート卿に例えた。
デイリー・テレグラフは紙面の制限を顧みず全文をそのまま掲載し、さらに1面に記事に関するコメントを載せた。英国、その他の国のメディアも相次いでコメントを発表し、中国の外交官が分かりやすい言葉を用い、かつてない輿論攻勢をかけたとした。BBCおよび英国の独立テレビ局も、相次いで筆者に取材を申し込んだ。彼らが筆者に投げかけた一つ目の質問は、「なぜ日本の軍国主義をヴォルデモート卿に例えたのか」ばかりであった。
筆者は英国、さらには世界で熟知されているキャラクターを用い、西側諸国の読者に靖国神社がどのような場所であるかをすぐに理解してもらい、中国が毅然として安倍首相の靖国参拝に反対する理由を、国際社会がなぜ日本の軍国主義の復活を共に防がなければならないのかを理解してもらおうとした。英国に駐在している筆者は周囲の影響を受けており、英国の小説『ハリー・ポッター』と映画に登場する悪者、ヴォルデモート卿のイメージが自然と頭に浮かんだ。
日本の軍国主義をヴォルデモート卿に例えるのは妥当だろうか?両者はイコールで結ばれる関係だろうか?これを詳細に検討したところ、三つの共通点が見つかった。
(一)日本の軍国主義とヴォルデモート卿は、闇と悪、この上なき罪業を示している。ハリー・ポッターの中で、ヴォルデモート卿は最大の悪魔で、「闇の魔王」とも呼ばれる。人々はその名を聞いただけで怖気づき、その支配の時代は壊滅を特徴としている。日本の軍国主義は歴史上、アジア各国に深刻な災いをもたらし、その罪業は書ききれないほどだ。
(二)両者はいずれも魂が失われず、死体の体を借りて復活する。日本の軍国主義は第二次世界大戦で致命的な打撃を受けたが、徹底的に清算されることはなかった。今日の靖国神社は、軍国主義の魂を呼び戻す神社であり、第二次世界大戦のA級戦犯を祀っており、間違った歴史観を喧伝している。日本の政治は右傾化を加速しており、軍国主義が復活の勢いを見せている。ヴォルデモート卿も肉体が破壊されても、隠された「分霊箱」を使い復活できるのだ。
(三)両者はいずれも放任できず、悪を徹底的に根絶やしにする必要がある。ヴォルデモート卿は最後に正義の力によって完全に消滅し、魔法の世界が再び平和を実現した。しかし日本の軍国主義は再び、今日のアジアの不安定・危険の源になりつつある。中国は国際社会と共に行動し、悪を根絶やしにし、災いを未然に防ぐべきだ。これは「道理にかなえば支持者が多くなり、道理に背けば支持者が少なくなる」という正義の戦いだ。
日本の軍国主義は現実世界のもので、ヴォルデモート卿は文学作品の虚構の人物であるが、両者は軌を一にする、まったく同じ存在だ。ゆえに筆者は記事の第一段落に、「ハリーポッターのヴォルデモート卿は、自分の魂を7つの分霊箱に移した。ヴォルデモート卿を消滅させる唯一の方法は、この7つの分霊箱をすべて破壊することだ。軍国主義を日本のヴォルデモート卿に例えるならば、靖国神社はこの国の魂の最も暗い部分を隠す分霊箱にほかならない」と記した。
英国の読者は、「適切な比喩で、通俗的で分かりやすく、中国の立場を鮮明に表明した」とコメントした。英国のテレビ・ラジオの司会者や記者も、日本の軍国主義はヴォルデモート卿に例えると分かりやすく、伝わりやすいと述べた。
世界に情報を伝播する過程において、我々が日常的に使い慣れている概念や表現を使用し、ただそのまま翻訳して外国に移すのが良いだろうか?それとも「本土化」により、より多くの共鳴を引き起こすべきだろうか?答えは当然ながら後者だ。中国の話を語り、中国の声を届けるためには、絶えず模索が必要だ。(筆者:劉暁明 中国駐英大使)
「中国網日本語版(チャイナネット)」2014年1月10日