海南に行けば、誰もが期せずして中国人民解放軍の最重要基地の一つの存在に気づく――それは三亜の郊外にある楡林海軍基地である。その基地は山に身を隠すようにつくられており、今後中国潜水艇・潜水艦部隊の重点基地になると目されている。現在、中国潜水艇の数・戦力は増加・向上を続けている。今後数年のうちに、通常型の潜水艇と原子力潜水艇の両方が楡林に配備されることになるだろう。
この一体の海域は太平洋とインド洋の重要な深海航路に直接通じている。したがって中国が(制海権を)抑制されることを回避しようと思うのならば、南中国海が極めて重要な意義を有することは明らかである。中国政府は、この玄関口を通じて日本とグァムを含む列島線(island chain)を越え、経済発展のために到達することが必要なその他の地域にまで海洋での影響力を及ぼしていくだろう。
10年前、一人のフィリピンの将校が筆者に対しこのように言ったことがある。「“あれを片づける”には1000ポンド爆弾一つあれば十分だ」。――彼は、中国がフィリピンがその経済区域内にあると称しているミスチーフ環礁(Mischief Reef)上に建造した建築物のことを指してこう言ったのだった。しかし現在にあっては、中国の経済・外交・軍事における実力に鑑み、フィリピンの政府関係者がこのようなことを再び言うとは考え難い。
米国の艦隊はかねてより十分に南中国海を重視してきたが、それはあくまでも商業貿易上の航路が滞りなく通ずるよう確保する上での重要海域という観点からであった。しかし、中国海軍の軍事力の拡充は米国の役割に変化をもたらした。楡林の潜水艇基地は、既に米国とその盟友国である日本やオーストラリアにとって監視の対象となった。
対外的にはあまり認識されていないが、南中国海域には未開発の石油・鉱物資源が存在している。数年前には、ここに眠る潜在資源の存在が(領海)紛争を引き起こしている核心的な要因であるとみられていた。しかし今日においてこの海域内外の国が憂慮しているのは、南中国海が中国藍水海軍(遠距離海域での任務にあたる部隊)の野心の重要な突破口となることである。中国人民解放軍の戦略専門家と非公式の場で話した折にわかったのだが、明らかに彼らは(中国が)他国によって抑えられることを嫌がっている。最近開かれたある地区安全会議の合間(会議中ではない)に、一人の中国の戦略専門家はこう述べた。「もしも、南沙諸島を抑えれば南中国海を抑えることができ、ひいては中国を抑えこむことができると考えている者がいるとすれば、それは思い違いだ。中国がそのような状況の発生を許容することは絶対にありえない」。
「中国網日本語版(チャイナネット)」 2010年10月18日