事態はこれにとどまらない。日本の国民は原発の安全性に強い疑問を感じているため、原子力の発電比率を高めることは不可能なばかりか、現在の比率を維持するのですら難しい。原子力発電の代わりになるのは火力発電だ。原子力発電と異なり、火力発電は大量の温室効果ガスを排出し、日本の排出削減量の承諾にも影響する。日本政府は今年4月5日、地震という「不可抗力」に遭遇した日本は削減義務を果たせないとし、年末に南アフリカで開催される第17回気候変動枠組条約締約国会議(COP17)で『京都議定書』の例外扱いを要請する方針を固めた。『京都議定書』は、排出削減の問題において先進国と発展途上国は「共通だが差異ある責任」を担うことを基本原則としている。日本政府の例外扱いを要請するという決定は、言ってしまえば、「先進国の基準で排出削減したくなく、発展途上国の基準でひいきして欲しい」ということだ。エコ技術が最も進んでいると自ら過大評価してきた日本にとって、このようなことを要請するのがどれほどばつが悪いことかは想像できる。
偶然にも、昨年末、東京大学のある学者は書籍の中で、「日本は発展途上国に逆戻りする」という見解を示した。ここで言う「発展途上国」は、正確には「中等先進国」と言うべきで、つまり先進国の一つ下だ。いずれにせよ、この本を読んだ多くの人は初めはこの考えに賛成せず、作者は読者を驚かせているだけだと思っていた。ところが数カ月後に発生した一連の出来事は、この書籍に多くの実例と補足を提供したに違いない。
この書籍で提供された論拠によると、日本の1人あたりGDPは1970年代初期にイギリスを超え、80年代後期に米国を超え、明治維新以来の「欧米を追いつき追い越す」という願いを実現した。しかし、その後すぐにバブルが崩壊し、日本は20年以上続く低迷期に入り、90年代後期には米国に再び逆転された。2010年の米国の1人あたりGDPは4万7132ドル、シンガポールでさえ4万2653ドルに達しているというのに、日本は未だに4万2325ドルにとどまっている。ここ数年、日本円の対ドルレートは上昇傾向を維持しており、購買力平価(PPP)の角度から言って、この動きは強まると見られる。シンガポールは1994年にすでに日本を追い抜いている。日本が一刻も早くデフレの悪循環を脱し、追いつけるようすばやく行動しなければ、日本はアジアトップという地位を失うことになる。アジアでもトップの地位を守れなければ、アジア唯一の先進国である日本はますますばつが悪くなるのではないか。
「中国網日本語版(チャイナネット)」2011年6月30日