記者:『チベット犬物語』のプロジェクトは最初どうやって始まったのか?
朱:私が2008年マッドハウスに入社する前にいた会社で小説『藏獒(チベット犬)』の著作権を担当していた。当時の目標は、トップクラスの会社と手を組むことだった。マッドハウスだけではなく、さまざまな企業に接触を試みた。また、友人に小説の日本語版の翻訳を依頼した。たまたま、日本アニメ業界でカリスマプロデューサーの丸山正雄さんがこの小説を読み、とても気に入ってくれた。チベット、犬など丸山さんが元々大好きだった要素がこの小説に全て含まれていた。
記者:すると、今回連携できたことは丸山さん個人の力がトリガーになったといってよいのか?
朱:これは重要な原因だったが、それだけではない。今回の共同制作は正式なビジネスなので、ビジネス的にもマッドハウスは勿論さまざなまことを考慮した。原作の小説は人気があり、内容は優れているし、それに、当時は中国アニメ「喜羊羊」の劇場版がまだなかった。中国のスクリーンではまだアニメ映画が非常に求められている状態だった。当時の取り巻く状況なども全面的に検討していた。
記者:これまでは、日本と中国のアニメ企業が連携を求める話は少なくないものの、実際、契約を交わす段階にまで至ったケースはあまりない。今回、共同制作に成功した理由はどこにあるのか?
朱:私は個人的には、偶発的な要素が多いと思っている。それに、これまでは中国の会社は中国的な要素を強調しすぎる傾向があったと思う。そういう作品は外国人には理解しにくく、海外の会社と共同制作したり、海外展開したりする場合には不利だ。『チベット犬物語』には、そういった不都合な点があまりなかったのも成功した重要な原因だと思う。
記者:今回の共同制作でご苦労された点は?今回の経験を通して、このような連携にとって、最も重要なことは何だと思うか?
朱:このような二国間の会社の共同制作は、難しいのは当然だ。中国で上映する映画は政府の管理機関の審査に合格しなければならない。だから、時にクリエーターたちは審査を考慮し、自分の意志や創作アイディアを抑えなければならない。ほかにも苦労といえばこれだけではないが、この場で言えないことももちろん多い。言えることは、実際、簡単なことではないということだ。
こういう共同制作では、中日両国は言葉、文化、制度などが異なるので、コミュニケーションをとって、わかり合おうとすることが最も重要だと思う。今回、私たちはこれでなんとかうまくやってこれたが、これは私の経験からのアドバイスといえる。