文=中国社会科学院日本所所長 李薇
3月11日の東日本大震災による津波や原発事故から1年が過ぎ、日本が大災害を切り抜けたかどうかに関心が集まっている。また日本の国運が大きな転換期を迎えているこの時期に構造的な矛盾を乗り越えるかどうか、国の発展のためにどのような立場と行く末を導き出すかが注目されている。
まず、1年が過ぎ、日本はある程度の回復力があることを示したが、手に負えない問題も明らかになり、災害復興も大幅に遅れている。放射能汚染区域の住民の今後の生活、がれきの山の焼却や埋め立て問題、汚染地区のがれきの処理や土壌汚染の対策など困難は極めて多い。また汚染被害の賠償問題に関する対応も混迷し、長期化している。
震災後の再建が後押しし、今年の日本経済は2011年に比べれば回復が期待できるが、高い給与コストや法人税率、円高、電力コストの上昇などが足を引っ張っている。日本の自動車業界はなおも好調だが、家電やIT産業、造船業などの従来は日本の強みだった産業は外部の熾烈な競争の中、深刻な赤字が続いている大手企業も少なくない。製造業の海外への移転が加速するのも避けらない状況となっている。
政局の雲行きもまた怪しい。社会保障・税制一体化改革は政府が経済と社会の発展のために打ち出した政策であり、税収と社会保障制度の構造的な矛盾を解決する事が目的である。政策の有効性や合理性などについて与野党の意見は一向に集約できないままである。与野党の協議は総裁選の前倒しを探る動きにまで発展している。
そして、長期的な構造問題は益々深刻化している。人口構造は十数年に渡って続いてきた日本経済の低迷の主な要因である。日本は既に高度経済成長期の「人口ボーナス」期から経済成熟期の「人口負担」の時代に突入している。2011年末まで、日本の労働人口は毎年1%のスピードで減少し、経済成長に0.7%のマイナス効果を及ぼし、毎年0.7%の労働生産性の伸び率を相殺してしまう。
人口構造の問題に関連して、社会保障制度の支出が財政支出に占める割合が年々上昇し、毎年1億円のペースで増加しており、財政負担が高まっている。公共債の残高が国民預金残高である1400億円に近づきつつある中、国への我慢は極限まで達している。