地震・大津波・原発事故の三重災害が日本を襲った昨年の「3.11」から1年になる。震災後、「日本は経済大国という地位から退くことになる」と指摘するエコノミストも後を絶たなかったが、この1年間の動向は、日本の力強い回復力を示しており、地震が経済大国の地位を脅かすなどとの報道は過剰な反応であったことが分かる。
3.11地震の震源は日本の主要工業地帯を外れた東北地方の沖合であり、被害が最も著しかった地域は東北地方沿岸部の農業・漁業が盛んな地域である。甚大な被害を受けた宮城県、福島県、岩手県の国内総生産(GDP)は3県合わせても全国の4%に過ぎない。日本政府の推測によると、東日本大地震の直接的損失は約25兆円(1ドル=82円で換算)とされているが、これは日本が保有する実物資産総額の1.2%程度に過ぎない。
災害発生当初、内閣府と中央省庁および地方自治体間の連携プレーが出来ておらず、救助救援活動は混乱を極めた。だが、この1年間の復旧作業の進展度には目を見張るものがある。地震から1年がたった今、原発事故により放射能汚染を受けた地域を除き、被災地の住民の生活は概ね正常化している。道路は障害物が除去され、修復されており、瓦礫は撤去され、倒壊した建物も取り壊された。英紙「The Sun」は、「設備はすべてきちんと修復されている。まるで大きな手が瓦礫を取り除き、裂けた大地を平らにならしていったかのようだ。基礎修復工事中の所だけが、この度の被害の大きさを感じさせてくれる唯一の光景となっている」と描写している。
大震災からの復旧・再建は容易なことではない。将来をじっくり見据え、合理的かつ周到的な計画が不可欠であると同時に、品質的にも妥協があってはならない。それは瓦礫処理の難しさを見ても分かるだろう。昨年の地震および津波により、仙台市では海岸線から4キロメートル以内の土地は265万トンもの瓦礫で埋め尽くされた。そのトン数は仙台市100万人の人口が10年かけて出されるゴミの量に匹敵する。当自治体では環境保全型の処理方法で分別処理を行なっている。仙台市環境局には震災廃棄物対策室が設置され、燃えるゴミ、燃えないゴミ、資源ゴミの3つに分別されている。さらに、金属、電気製品、自動車、セメント、樹木などの10種類に大別される。瓦礫のほとんどは焼却処理されるため、海岸近くに仮設の焼却施設が3箇所設けられ、1日当たり480トンの瓦礫を処理している。
2月26日、世界最大水深の湾口防波堤の災害復旧事業着工式が、岩手県釜石市港町で行われ、東日本大震災の津波で損壊した釜石港の防波堤の復旧工事が行なわれることになった。復旧工事は崩れた部分を撤去し、元通りの高さ(海面からの高さは6メートル)に戻すというもので、費用は約490億円かかるとされている。この防波堤は総延長約2キロメートル、基礎部分を含めた水深が63メートルで、世界最深としてギネス世界記録に認定されている。5年程度での復旧を目指している。