このような短絡的な視点と縦割り思考に対するこだわりによって、ジョブズに負けた日本産業、日本企業は、携帯電話分野だけに止まらない。AV機器、通信情報技術の大御所であるソニーは、1980年代には早くも携帯に便利で、しかも全く新しい体験が可能なAV機器を開発していた。しかし、社内の意見が乱立し、商品開発技術者と映像部門との連携が上手くいかず、ユーザーが自由に音楽をダウンロードして楽しめる商品モデルを開発した後、自社の映像商品の販売に影響が出ることを避けるために、ソニーはデジタル音楽配信のために特殊なファイル規格を開発した。それは当時、流行していたmp3規格ではなかったので、アップルのiPodが突如として登場したときには、すでに後悔先に立たずになってしまった。
すなわち「島国症候群」は、つまるところ視点と思考の問題だ。日本の国内市場は飽和しやすく、各社メーカーは常に新しい商品を求められる。しかし、自動でふたが閉まる便器のようなささやかな発明で人の目を引いているようでは、広がりがない。「過剰な高品質、多機能」ではとどのつまり徒労に終わってしまうだろう。過去の成功体験で日本企業はある種の「グローバリズムは日本化」という錯覚に陥っており、海外ユーザーの体験やソフト開発に重きを置いていない。この姿勢は、企業内に国際化レベルの低さや年功序列の給与体系として表れており、これはここ20年の日本人の内向き化傾向と一致している。短期間で、日本企業は再編により自己改革できるだろうが、実質的なグローバル化への道のりはまだまだ遠いだろう。
(楊向峰 日本早稻田大学客員研究員)
「中国網日本語版(チャイナネット)」2012年4月25日