状況に適応するだけではなくて、主体が状況を変えようとするときに、動物にはない人間性が出る。人間の理性が働く。
そのためには勉強し続けなければならない。勉強とは単に知識を得るだけではない。知識は他者の役に立ったとき、どんな小さな行動であっても、主体において心を揺さぶる《愉悦》になる。
日本人は近代以降、ペシミズムでメランコリックだと言われてきた。事実、今も経済的危機感ばかりが煽られ、自信喪失するような喧伝が目立つ。メシや小金の獲得ばかりに右往左往していれば、前向きになられるはずがない。
理想がないことこそ日本人の最大課題ではあるまいか。いまが不幸だとすれば闘わなければならない。危機とは、何らかの原因によって従来の平衡が破られるのである。危機の本質を見つめる精神が大切だ。
ただ見るだけでなく、精神の目を凝らさねばならない。P・ヴァレリーは「精神の目とは言葉である」と喝破した。状況に働きかけ変えていく。状況は変えるものである。そのためには言葉を吟味しなければならない。
危機ならば、必ず人が育つ。なぜなら本気になるからだ。
奥井禮喜氏のプロフィール
有限会社ライフビジョン代表取締役
経営労働評論家
日本労働ペンクラブ会員
OnLineJournalライフビジョン発行人
週刊RO通信発行人
ライフビジョン学会顧問 ユニオンアカデミー事務局
1976年 三菱電機労組中執時代に日本初の人生設計セミナー開催。
1982年 独立し、人と組織の元気を開発するライフビジョン理論で、個人の老後問題から余暇、自由時間、政治、社会を論ずる。
1985年 月刊ライフビジョン(現在のOnLineJournalライフビジョン)創刊。
1993年 『連帯する自我』をキーワードにライフビジョン学会を組織。
2002年 大衆運動の理論的拠点としてのユニオンアカデミー旗上げ。
講演、執筆、コンサルテーション、インターネットを使った「メール通信教育」などでオピニオンを展開し、現在に至る。
高齢・障害者雇用支援機構の「エルダー」にコラム連載中。
「中国網日本語版(チャイナネット)」 2012年5月22日