先の週末、日本の新聞は「釣魚島」の3文字で占められた。丹羽宇一郎駐中国大使は東京都による釣魚島購入に明確に反対したものの、すぐさま日本政府の窓口を通して「謝罪され」、さらに6人の議員が釣魚島海域で「海釣りコンテスト」という茶番劇を演じた。度重なる混乱の中、日本の対中戦略の困窮した状況が鮮明になった。
伊藤忠商事出身の丹羽氏は民間人として中国大使に就任、代表して日本の対中戦略における一つ面の重大な利益を訴求することになった。日本経済の成長には中国など東アジア隣国の市場のけん引が必要であり、対中関係は直接、今後数年の日本の国運の盛衰にかかわる。だが同時に、日本の強いナショナリズムは中国を前にして第二に屈し、政治大国の目標を軽々しく放棄することを許さない。そうしたことから、戦略的側面における統一的な協調性に欠け、常に自己矛盾した対中政策が出現するようになったのである。
日本政府が丹羽発言に敏感な反応を示したことで、釣魚島問題に関して有するその立場に破綻が百出することが明らかにされた。1982年に国連海洋法条約が発効すると、日本政府の立場は徐々に変化し、中日間に釣魚島の主権をめぐる紛争が存在していることを否定するようになった。丹羽発言の後、日本政府はあたふたと面に出て火を消しはじめた。思うに、紛争がないとするなら、言うことに筋が通っているとするなら、このように疑心暗鬼になったり、周章狼狽したりする必要がどこにあるだろうか。実際、石原知事が島を買おうと、日本政府が火を消そうと、日本国内は釣魚島という名が繰り返されるたびに、「釣魚島には決して紛争がないわけではない」との印象を深めるだけなのだ。
丹羽騒動はまた日本政界の混乱無秩序な状態、民主党政権の薄氷をふむ思いを映している。丹羽大使のこの発言によって、各界の民族主義保守勢力は政権党を攻撃する新たな要素を手にした。下野して行政権限を失った自民党は、政権を攻撃する力点をようやく見つけ、丹羽氏を攻撃することで民主党内閣に圧力を加えようとしている。
対外的に紛争の存在を否定し、対内的に理性の声を抑えようとする日本政府のやり方は、政権の危機を一時的には緩和する可能性はあるが、日本の長期的利益にとってはむしろマイナスである。丹羽大使は島の購入が「中日関係にきわめて重大な危機をもたらす」と発言したが、中日関係が本当にその通りにならないことを願う。仮にそうなら、日本の有権者は「自民党政権は腐敗、硬化していても突発的な事件などの外交面の危機をなんとか抑えられたのに、民主党が自民党のようにできないのはどうしてか」と問うだろう。
幸いに、丹羽発言をはじめとする日本各界の理性の声が消え去ることはない。こうした理性は日本各界において普遍的な共鳴として存在している、と信じるに足る理由はある。結束して外部の力に立ち向かう「村文化」や、政党政治による利益関係、また「中国のことに触れたら必ず反対する」といった不正常な雰囲気などが、こうした理性の声を圧迫する可能性はあるものの、畢竟、人びとに希望を見させてくれるのである。
日本にとって、国家として寛容な気持ちをもって隣国に対する、政府として誠実に有権者に対することが、自らの光明に満ちた未来を得る唯一の出口になるのではないだろうか。まさに丹羽氏と同じ戦線に立つ外務省の前高官、孫崎享氏が語るように、日本政府は釣魚島が紛争の領土であることを認めなければならず、日本の国内法で問題を処理することをひたすら強調していてはいけない。紛争の存在を認めるとともに、真実を有権者に伝える必要があり、民主党政権はそうしてようやく「長く安定した執政」を実現できる。
筆者:楊伯江・国際関係学院教授
「中国網日本語版(チャイナネット)」2012年6月11日