「軍事要所」も景勝地
上述の背景を理解したうえで「クーリエ・ジャポン」の記事を再び読むと、同誌が指摘することは完全に成り立たないとわかる。沖縄県の石垣市を例にしてみる。「クーリエ・ジャポン」の報道によると、石垣島にある石垣市の港近くに高層マンションを購入する中国の投資家は、海上保安庁の基地及び船舶の動向を見ることができる。「隊員が緊急出動する際に港を出入りする船舶の状況や、船舶に搭載する貨物の詳細などが見られる可能性があり、安全面の大きな問題になる」と、同誌は海保関係者の話として伝えた。
ところが同誌は、石垣島が亜熱帯の風光や珊瑚礁、ダイビングで名高い沖縄県の有名な観光地であることには触れていない。石垣市の市街地は港周辺の1、2キロの周りに集中し面積が小さいため、同市で海を見渡せる住宅を購入すれば港が見えないはずはない。記者は石垣市を取材した際に港近くのホテルに泊まったが、窓越しに港の様子をすべて見ることができた。これは地元でごく普通のことである。
また「クーリエ・ジャポン」は、北海道にある陸上自衛隊の倶知安駐屯地の近くにある100ヘクタールの土地を中国企業が購入したと報じた。ところが、ここに北海道の有名なスケート場や温泉のほか、景勝地の羊蹄山もあることには言及していない。中国大陸部からの観光客の姿はまだ少ないが、冬になると、スケートをするために訪れる中国香港や台湾からの観光客でにぎわう。中国企業がここで観光やリゾート物件を開発するのは、商業利益が目的である。さらに、自衛隊の案内を読めばわかるように、ここに駐屯する自衛隊は小規模の普通部隊であり、特別に敏感なことはない。
実際、日本の自衛隊は全国に2600あまりの施設を持ち、主要都市や景勝地の周りにあるものも多く、人を遠ざけることは難しい。有名な富士山を例にすると、自衛隊は富士山周辺に「北富士」と「東富士」という数千ヘクタールに及ぶ大きな演習場を有し、登山道の両側に駐屯施設も散在している。南麓から上ると、美しい風景の中でよく「防衛省用地」「立ち入り禁止」などの標識を目にする。近年、富士山近くに温泉ホテルの中古物件を購入し、中国人観光客を受け入れる中国企業が現れている。今後、こうした企業はますます増えると見られる。「クーリエ・ジャポン」誌のような大げさな基準で言えば、富士山の周辺は軍事立ち入り禁止区域に指定されるべきだろう。
中日関係にも影響するおそれ