中国経済が日本を超えたことについて、納得のいかない中国人もいるようだ。中国人の一人当たりGDPは日本の10分の1に過ぎないため、大した成果ではないというわけだ。しかし、筆者は一人当たりGDPだけで中国経済を評価するのは不適切だと考える。計算方法が変われば、中国の経済力や市民の生活水準の統計と序列はどれも大きく変わってくるからだ。経済面だけではない。その他の面でも中国は日本を追い越しており、今後全面的に超越するためには市民文化の発展が肝心になってくる。
過去20年間において、多くの中国人が事実上の「富の革命」を経験した。それは主に中国の住宅所有率の急速な上昇に示されている。中国の不動産業に問題があり、不満があるとしても、数多くの家庭が不動産を所有していることは紛れもない事実であり、まずは自分たちの成果を認めるべきである。問題解決はそれからだ。現在、“発達プレート”(人口約3億人、日本の人口の2倍以上)と言われる都市部の多くの住民の居住環境水準は恐らくすでに日本を抜いている。中国が日本を追い越したのは、国力が大きく変化したというだけでなく、多くの市民の生活水準の急速な向上によるものであることを裏付けている。
技術分野においても、中国は日本よりはるかに劣っていたが、現状はまったく異なる。総合的に見て、日本は民間技術においては依然として中国の先を行くが、軍事技術の面では、中国が全面的に日本をリードしている。民間技術でも、中国は猛スピードで追随しており、高速鉄道、レーザー、量子情報通信、海底石油探査、スーパーコンピューター、交雑水稲などの分野ではすでに日本をリードし、他の分野の技術格差も縮まってきている。
当然、日本と比べると弱みもある。最大の弱みは市民文化の水準が日本に及ばないことだと私は考える。いわゆる市民文化とは、都市生活を形成する規範のことだ。並んで待つ、交通ルールを守る、公共の場で騒がない、クラクションをむやみに鳴らさない、社会の秩序を守る、礼儀正しく譲り合う、慎むといった点だ。日本を訪れたことのある人は、日本人の礼儀正しさ、秩序を守る姿、仕事に一生懸命取り組む姿など市民文化的素養の高さに深い印象を覚える。日本社会のこうした良さを我々は学んでいく必要がある。