中韓・中豪の自由貿易協定(FTA)が20日、同時に発効した。多くの製品の関税が、2016年1月1日より引き下げられる。しかしもう一つのアジアの大国である日本は、一つの問題を迎えている。日本は今後、この2つのFTAの発効に伴う影響にいかに対処するのだろうか?
2つのシンプルなデータを挙げよう。中国がオーストラリアに輸出する商品の関税が全面的に免除となり、オーストラリアから輸入する商品の9割以上の関税が免除となる。中国が韓国に輸出する商品の5割、韓国から輸入する商品の2割が直ちに減税となり、最終的に双方の商品の9割以上が免税となる。10年の過渡期を経て、韓国のGDPが1%上昇する。この高い数値は、日本のTPP加入のほぼゼロという効果と比べ、有用性が際立っている。
中国と他国のFTA締結のより大きな意義は、世界的な経済大循環の統合のけん引にある。日本メディアは先ほど、世界経済は中国の商品を中心とする循環システムに変化したと分析した。鉱産物、エネルギー、部品、投資、技術などの生産要素が中国に入り、商品を形成し、さらに中国を含む世界市場に循環していく。そのため各国の企業はこの循環に合わせるようになり、流れに逆らえば倒産することになる。液晶パネルの世界トップ企業であるシャープを例とすると、その液晶パネルは世界一の技術を持つが、中国の携帯電話のユーザーが大量に使用しているのは韓国および台湾地区の製品だ。世界の9割以上の携帯電話が中国で生産されているため、これはシャープの液晶パネルが巨大な市場を逃したことを意味し、倒産の危機に陥るのも道理だ。
中心的な経済体である中国が選択権を握り、相互に利益をもたらすFTAパートナーの企業を自ずと優先的に選ぶ。これは公認されている市場経済の法則だ。中国とFTAパートナーは数年後に経済統合を完了し、余剰生産能力を輸出し合い余剰を有益とすることで、相互補完する経済構造、すなわち共同の市場を形成する。非FTAパートナーは進出できず、門前払いされる。
より重要な事は、中韓・中豪FTAにより、中国が東アジア共同体の構築に着手できることだ。東アジアのFTAの地図を見ると、中韓・中豪のほか、中国はさらにニュージーランド、シンガポール、ASEAN10カ国とFTAを締結しており、今年さらにASEANとFTAアップグレード版を締結した。つまり中国は日本以外のすべての東アジア諸国、オーストラリア、ニュージーランドとFTA圏を形成している。中国は2016年に、次の取り組みが可能だ。
(1)中国と上述した各国の二国間FTAを共同のFTA、つまり初歩的な経済共同体とする。この面で、日本はすでに遅れをとっている。韓日はFTAを締結しておらず、ASEANとの8割を免税とする低水準FTAも、2018年の発効を待たなければならないからだ。
(2)中韓日FTA圏の交渉に専念する。中韓FTAは日本を刺激した。中韓日FTAは3年間に渡り正式に交渉を続けているが、大きな進展は見られない。中韓FTAの減税が始まり、韓国と同様の製品を生産する日本は居ても立っても居られなくなるはずだ。
(3)東アジア地域包括的経済連携(RCEP)の交渉を完了する。RCEPはASEAN、中韓日、オーストラリア、ニュージーランド、インドの、世界の過半数の人口を網羅する環東アジアFTA圏だ。今年の交渉の進捗により、8割免税の実現が完全に可能となった。
中国のFTAの攻勢は、日本により大きなプレッシャーをもたらす。日本が何もしなければ、差は広がるばかりだ。(筆者:趙宏偉 法政大学教授、中国人民大学重陽金融研究院高級研究員)
「中国網日本語版(チャイナネット)」 2015年12月21日