なかなか進まないF35計画によって、米国とその同盟国は身動きが取れない状態に陥ってきている。米DefenseNews.comはペンタゴンの担当司令官の報告を引用し、ステルス戦闘機「F35ライトニング」に存在するまだ知られていない問題は操縦、総合航空電子システム、アフターバーナー、頭部装着ディスプレイなど多方面にわたると伝えた。日本、英国、カナダなど米国の同盟国もF35の状況に慌てている。カナダ紙「The Toronto Sun」は21日、中国がJ20ステルス戦闘機を開発したとしても、F35が必ずしもカナダ空軍の必須選択肢とは限らないと伝えた。
▽「ライトニング」が「カタツムリ」に
F35はプロジェクト立ち上げ当初、空軍、海軍陸戦隊、海軍ぞれぞれの要求を満たすためにA、B、Cの3機種があった。米国はF-117、F-22などのステルス戦闘機開発に成功しているが、F35を「万能ステルス戦闘機」にしようとしたことがそもそも間違いだった。DefenseNewsによれば、米空軍のF35Aと海軍陸戦隊のF35Bは迎角試験飛行で予想より横滑りのひどい遷音速機翼の方向回転問題が起こり、一部の部品も予測された信頼性に達していなかった。それだけでなく、F35に搭載されているPratt & Whitney社製のF135型エンジンのアフターバーナーに「振動燃焼」(気流分裂により激しい振動が発生し、エンジンの最大推力の妨げとなる現象)がみられた。さらに防火・防爆に用いられる機上不活性ガス発生システムも再度設計する必要がある。こうした状況から、F35はすでに何度も試験飛行を行ってはいるが、部分的なシステムにまだ多くの問題を抱えていることがわかる。
F35の3機種のうち、海軍陸戦隊が使用するB型機の技術難度が最も高く問題も多い。ゲーツ米国防長官はこの1年の間に2度F35計画の調整を行い、F35AとF35Cの進展は比較的順調だが、F35Bの問題はまだ解決されていない。F35Bの構造と推進システムはいずれも改良が必要だが、そうすると機体の重量が増し、1機当たりのコストも跳ね上がる。
米航空専門紙の電子版は21日、ペンタゴンの意向に基づき、生産メーカーのロッキード・マーティン社は2年でF35Bの欠陥を改善しなければならない、でなければ同戦闘機は最終審査を通過できないと伝えた。
米国はF35の開発当初、自信満々で多くの同盟国を巻き込んで多額の資金を集めたが、何もかもを求め過ぎて計画全体を遅らせる結果となった。米国はそれまで垂直/短距離離着陸機を設計したことがなかったため、F35Bの開発進度の遅れが計画全体の足を引っ張ることになっても不思議ではない。