「早期地震検知警報システム」は、日本の国鉄鉄道技術研究所が開発した地震警報システムである。地震の初期微動(P波)を検知し警報を発令することで、新幹線の被害を最小限にとどめてくれるこのシステムは、1989年から各路線に導入が開始された。
2004年10月23日に起きた新潟県中越地震では、上越新幹線(大宮-新潟間)が著しい被害を受けた。高架橋やトンネルが損傷したほか、浦佐駅-長岡駅間を時速200キロメートルで走行中だった上越新幹線「とき325号」が脱線事故を起こしている。上越新幹線にはすでに改造済みの早期地震検知警報システムが設置されており、初期微動(P波)を検知した数秒後には「とき325号」の非常ブレーキが作動していたが、列車が走行していた場所がちょうど震源の上であったため、列車が止まる前に本格的な地震動が起きてしまい脱線事故という結果になってしまったのである。ただ、車両は脱線した後、線路わきの排雪溝にはまりこんだまま滑走したため転覆を免れた。何よりも幸運なのは、乗客乗員に死者・負傷者が1人も出なかったことだろう。
新幹線の地震対策はそれ以降、一層強化されることになった。新幹線の「早期地震検知警報システム」は2006年以降、気象庁・鉄道総合技術研究所共同開発の「早期地震警報システム」に置き換えられた。2007年3月までには、新幹線全線区の地震計が新たに開発された新地震計に更新された。当初の警報システムは、P波検知から警報までに約3秒要していたが、今ではP波検知後1~2秒での警報が可能となっている。こうした幾重もの安全対策のおかげで、今年3月11日、東北地方太平洋沖地震が起こった際にも、被災エリアである福島・宮城・岩手を通る東北新幹線(東京~新青森)には、計23本の列車が乗客を乗せて時速270キロメートルで走行していたが、いずれも脱線せず無事停車することができたのである。
「中国網日本語版(チャイナネット)」2011年7月28日