文=コラムニスト・陳言
大型バレエ演目の新編『白毛女』が会場いっぱいの拍手とともに幕を下ろした。すると多くの観客が舞台に押し寄せた。63歳になる主演の森下洋子さんの表情は、彼女が演じた20歳の「喜児」が山奥の洞穴で「大春」に再会した時と同様喜びに充ち溢れ、疲れや辛さをすべて覆い隠していた。そしてこの舞台の成功は彼女の舞踊技術が少しも衰えていないことを表していた。
ほかの団員の衣装と比べて森下さんの衣装はずいぶん古めかしく感じられた。
「40年以上前、周恩来総理に頂いた衣装です。それに相応しい舞台のときだけ袖を通します」
森下さんはうつむいて衣装を見やり、受け取ったのがつい最近であるかのように語った。
1955年、松山バレエ団によって世界で初めてバレエ化された『白毛女』は、58年に中国公演を果たしている。歌劇としての『白毛女』は多くの中国人にとってなじみ深く、京劇としても58年に上演されているが、そのことを覚えている中国人は少ないかもしれない。映画『白毛女』さえもその印象を薄くしていく中で、バレエの『白毛女』だけが人々の心の片隅に残り続けたと言えるかもしれない。
文化大革命の時代、8作品ある革命模範劇がたびたびテレビで放映されていたが、そのうち『白毛女』の放映回数は他の作品よりも少なかったように思う。大春と喜児の再会シーンが印刷されたパンフレットを古本市などでたまに見かける以外、『白毛女』は私たちから徐々に遠ざかっていった。