資料写真:大震災から1年の被災地
幸い、どこかで手抜きしているというような話は報道されないから、ならば外から「早くやれ」の大合唱でせっつくのはほどほどにすべしだ。そもそも蚊帳の外がワイワイ言えば片付く性質ではないだろう。
建築土建工事などの人手が不足していて、ゼネコンが全国から人を集めてきて地元業者の下請けをするという話も聞く。失業者が多いからといって頭数で片付く課題でもない。私は昨年以来何度か、「被災者は耐えておられる。《非》被災者が耐えられるか」と指摘した。その思いを日々新たにする。
それら現実的問題の持っていく先は政治だ。政治がもたつくからだというが、少なくとも私が知っている政治家諸君が目下手抜きして優雅にやっておられるという話は聞かない。この種の批判は具体的なものについて整然と指摘するべきであって、抽象的な批判をすれば疑心暗鬼を増すばかりである。
もちろんもうちょっと何とかならんのか。という気分がわからないのではない。当事者の具体的な動向がわからないからイライラするのであるが、われわれが自分の仕事に邁進している程度に政治家・公務員諸氏もやっておられると考えるしかないではないか。
かかるせっかちイラチ的気風が蔓延するのは多分に危うい。西方面ではまたまた政治リセット論を引っ提げた政治的動きが目立つ。率直に言う。いまそんなエネルギーがあるのならば、解散を目論んで騒動を引き起こすのでなく、全国の《非》被災地自治体を総動員して被災地支援行動を起こしてくれないか。人気が冷めないうちにというのであれば何をかいわんや。
せっかちな国民的気風に一言したい。政治は人気でやるものにあらず。リセットも一つの方法だが、それは現実に一つひとつの面倒を果敢に処理達成していく気風が基盤にあってのことだ。「えーい面倒臭い、剛腕の誰か出てきて一挙片付けてくれ」というような軟弱気質であれば、またまた蓋を開けてがっかりするのがオチである。地に足をつけねばならない。
「中国網日本語版(チャイナネット)」 2012年3月12日
奥井禮喜氏のプロフィール
有限会社ライフビジョン代表取締役
経営労働評論家
日本労働ペンクラブ会員
OnLineJournalライフビジョン発行人
週刊RO通信発行人
ライフビジョン学会顧問 ユニオンアカデミー事務局
1976年 三菱電機労組中執時代に日本初の人生設計セミナー開催。
1982年 独立し、人と組織の元気を開発するライフビジョン理論で、個人の老後問題から余暇、自由時間、政治、社会を論ずる。
1985年 月刊ライフビジョン(現在のOnLineJournalライフビジョン)創刊。
1993年 『連帯する自我』をキーワードにライフビジョン学会を組織。
2002年 大衆運動の理論的拠点としてのユニオンアカデミー旗上げ。
講演、執筆、コンサルテーション、インターネットを使った「メール通信教育」などでオピニオンを展開し、現在に至る。
高齢・障害者雇用支援機構の「エルダー」にコラム連載中。