5月13日に中国・北京市で行われた第5回となる中日韓首脳会議で、中日韓FTA(自由貿易協定)交渉を年内に始めることで合意した。中日韓3カ国の専門家が9年にわたって進めてきた共同研究がここで日の目を見たことになる。日中産官学交流機構理事長・福川伸次氏(FTA交渉の日本側主席専門家、元通商産業省事務次官)は中国新聞社の取材に対し、「日中韓FTAは、現時点で現実に即した非常に意味のある3カ国間協定である」と何度も指摘している。
◇中日韓FTAはTPPよりも現実に即したもの
5月14日には早速、中国と韓国によるFTA交渉が行なわれ、日本は後れを取る形になった。福川氏によると、その原因は決して、世間に取り沙汰されるように、日本が環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉参加に向けて躍起になっているのとは関係がない。福川氏は「日本のTPP交渉への参加については今のところ進展は見られない。FTAとTPPは対立するものではなく、それぞれが影響をおよぼすことはない」と述べている。
福川氏はまた、「日本が景気回復を図りたいならば、保守的な姿勢を崩すべき。その意味においては、TPPもFTAも歓迎すべき出来事だ」との見解を示している。
福川氏は「TPPとFTAはその内容もカバーするエリアも異なっている」としている。FTAはすでに具体的な内容を詰める段階に入りつつあるが、TPPは次世代的な経済システムの一つとして、今はまだ自由貿易の理想論の一つに過ぎない。農業問題だけを見ても、TPP参加は、日本の農業の壊滅を意味している。これは日本の農業がこれまで国に手厚く保護されてきたことを意味している。貿易自由化を進めていけば、日本の食料生産は競争力が備わる前に壊滅することは必然的だ。対するFTAは実現する可能性が高い。また中日韓3カ国はもともと農業分野で強い提携関係にある。つまりTPPよりもFTAの方が容易に展開できるといえる。
農業だけでなく、ほかの分野も同様だ。産業構造が似ている中日韓3カ国は、交渉の障害となる問題を解決しやすく、よりよい提携関係を保つことができるはずである。そのため、中日韓FTAが実現する可能性は非常に高いと言える。
また福川氏は「現時点では日中韓FTAだけでなく、二国間FTA(日中FTA、中韓FTA、日韓FTA)も不可欠なものとなっている。日中韓FTAよりも展開しやすいはずだ」と指摘している。
◇FTA交渉 重要なことは「コンセンサス形成」