たくさんの検潮儀による観測、あらゆる文献・データ検討、海洋学と土木工学の面から批判的研究が続けられた。暴風時の高潮問題は後回しにし、正常な潮の干満から研究を深め、実験を重ね、水の摩擦力の近似法を作った。
ついでそれを実証するためにスエズ湾、ブリストル湾で計算と実際の観測結果の検証をし、ダム建設によってゾイデル海を塞いだ場合のワッデン海の干満の振幅が約2倍になることを突き止めた。
暴風時の高潮の計算に着手したのは1921年でその解法を発見したのは1925年である。そして報告書が作成された。1927年から実際の工事が始められた。9年の予定であったが、4年早い1932年にダムが完成した。
徹底した科学的研究がなされた。基礎方程式をたて、それの近似法を考え、実験で検証する。簡単な場合から複雑な場合へ、一つひとつ実地観測と照合し十分な確信を得てから本論に着手した。
朝永先生は「政治家・科学者・技術者のもっとも美しい協力の例であり、それがまた驚くほど見事に成功した例である。」と書かれた。
二つの話から、とかく他人事で性急に結論を求める社会的雰囲気、科学性抜きの政治的決断を求める悪しき傾向との対比を試みたかった次第である。
奥井禮喜氏のプロフィール
有限会社ライフビジョン代表取締役
経営労働評論家
日本労働ペンクラブ会員
OnLineJournalライフビジョン発行人
週刊RO通信発行人
ライフビジョン学会顧問 ユニオンアカデミー事務局
1976年 三菱電機労組中執時代に日本初の人生設計セミナー開催。
1982年 独立し、人と組織の元気を開発するライフビジョン理論で、個人の老後問題から余暇、自由時間、政治、社会を論ずる。
1985年 月刊ライフビジョン(現在のOnLineJournalライフビジョン)創刊。
1993年 『連帯する自我』をキーワードにライフビジョン学会を組織。
2002年 大衆運動の理論的拠点としてのユニオンアカデミー旗上げ。
講演、執筆、コンサルテーション、インターネットを使った「メール通信教育」などでオピニオンを展開し、現在に至る。
高齢・障害者雇用支援機構の「エルダー」にコラム連載中。
「中国網日本語版(チャイナネット)」 2012年6月5日