ところで、製品数の多さと必要とされる組立技術、組立工程の複雑さから、一国の産業競争力を示すとも喩えられる自動車産業であります。自動車メーカーについては世界的にも幅広く分布しており、世界各地で有力なメーカーが誕生しているのでグローバル規模で経済的にも価格競争が繰り広げられ、品質と価格が多様化し、適正な製品が市場に提供されているといえます。この、自動車産業よりもさらに工程が複雑かつ、より多くの技術を要するのが航空機産業です。
前述の航空機メーカー寡占企業の二社、米ボーイング社と欧州エアバス社以外でも世界各国で開発が進められていますが、それぞれまだ総合的な技術力に欠け、大量生産できるレベルに達していません。日本では、航空機メーカーは三菱重工業が中心となってMRJ (Mitsubishi Regional Jet)とよばれる機体を開発中です。今の事業計画からみれば、早くとも2010年代後半にならないと多くの機体の受注・生産はできない状態であるようです。ただし、日本の場合、米ボーイング社と欧州エアバス社の機体につかわれている高度な原材料・技術などを提供している企業が多くありますので、航空機開発の基礎的な技術はそこそこ持っているとも考えられ、前途は有望とも言われます。
そして、現在寡占の二社、そして航空機関連基礎技術のある日本(三菱航空機)を猛追しているのが、中国とロシアの航空機メーカーであります。
資料写真:ロシア統一航空機製造会社の新型民用機
ロシア国有企業のOAK(統一航空機製造会社)は2006年に設立され軍用航空機の技術を元に開発を進められていますが、先月5月にフランスやイタリアの技術支援も受けながらOAKの開発した「スホイ・スーパージェット」(SSJ)がインドネシアで販路開拓のためのデモ飛行中に墜落、乗客・乗員45人が死亡した事故が発生してしまいました。うーむ、痛ましい事件でありますが、ちょうど冷戦時代の核技術・宇宙開発の競争で様々な犠牲がでたような、「追い越せ追い抜け!国威発揚」の過程中の被害のようだなと僕は印象をうけました。この事件で、一気に航空機開発の速度がおちることはないでしょうが、OAKは少し慎重な展開となるかもしれません。
ロシアと同じように、中国もComac(中国商用飛機:Commercial Aircraft Corp of China)が市場に製品を供給できるまでに発展してきました。すでに中国内のエアラインから100機の受注もうけているということでありまして、安全性・技術は実績なくまだ不透明なものの、今後国内需要で販売を拡大し、その資金で技術開発を行なっていけるという継続的な追い風がありますので、国内需要が相対的に低い日本よりも有利なビジネス循環(特に資金面で)が達成されるでしょう。
中川幸司さんのブログ「情熱的な羅針盤