資料写真:中国が独自に研究開発を行ったarj21新型コミューター機
中国は経済発展著しい国でありますので、今後相当に中国内の民間旅客機需要は高まっていくでしょう。そして、国内で生産された機体を国内のエアライン各社に買い受けてもらうという取引がしやすいのが非常に強みであろうかと思います。その意味で、日本は、航空機開発関連技術はあるもののこの初期のファイナンス循環において世界的に競争劣位に立たされています。
その意味では、僕が検討するのは、日本はMRJを中心に航空機製造を発展させるのは中期目標にするにしても、短期的には技術を欲しているOAKやComacと技術提携ビジネスを積極的におこなっていったほうが初期のファイナンス循環が良くなるのではないかと思います(もちろん、中国だけ、ロシアだけとの一国取引よりも、バーゲニングパワーを維持するために複数の取引先としておくのは前提であります。)。
日本の航空機メーカーは、少なくとも先行する米ボーイング社と欧州エアバス社、そして国内買い手を先に確保することが可能な大国の強みを活かして猛追する露OAK社や中Comac社と同じような競争戦略では優位にたてないでしょう。そのためにも、日本の航空機メーカーは、これらの成長しつつある他国の航空機メーカーとの戦略的な技術交流で、まずは短期的にでもライセンシングでビジネスを拡充し(とはいえ、現有の航空機関連基礎技術が高いバリューを持っているという前提でありますが。)、これらの利潤が日本の航空機メーカーにも還元され、そしてその資金を持って国産航空機開発に臨めるような仕組みづくりが必要でありましょう(基礎技術保有企業と三菱重工業を中心とした航空機メーカーの資金循環を、一国の産業育成として如何に統合するか、産官連携のファンド等プラットフォームづくりの課題)。
当該日本のパーツ・原材料・ノウハウ等の部分ごとの技術力は、一社だけに集約されているのではなく、いくつかの企業に分散された強みとききます。これらの企業と、とりわけ露OAK社や中Comac社との提携がどこまで進んでいるのか、またこうした提携を日本の国策としてどれだけ推し進めているのか、これからどのように推し進め抵抗としているのか、非常に興味深いところであります。新しい日露合作、日中合作の産業交流がうまれるのか、非常に戦略的な分野であり、注目の産業でありますね。(僕も、このコラムを書いていて、日本の強いとされている航空機関連基礎技術をより細かく調査研究してみたくなってしまいました!!)
(中川幸司 アジア経営戦略研究所上席コンサルティング研究員)
「中国網日本語版(チャイナネット)」 2012年6月13日