しかしそれが落ち着くと、考えなければならないのは国全体のこと。票集めの頭はこの時には役に立たない。目の前には経済不振や周辺国との関係緊張など難題が山積している。
安倍氏は今回首相に就任後、最初の訪問国は米国とすでに決めている。「失われた日米同盟のの絆を回復していく」ことが最優先の外交課題だからだ。自民党は50年代に結成後、日米同盟を軸とする戦略を採ってきた。それを考えれば安倍氏が今回強調したのは実際には戦略の復帰といえる。
しかし時代が移れば世の中も変わる。今の日本はすでに米国だけに頼って自らの問題を解決できなくなった。日本経済が低迷する一方、中韓ロなど周辺国の経済は急成長の渦中にある。これらの国との関係が悪化すれば、その副作用は貿易額の減少としてはっきりあらわれる。それは日本経済にとって泣き面に蜂であるに違いない。そう考えれば、安倍氏が周辺国に善意を示し始めた理由が容易に理解できる。
米国も日本のさらなる過激化を望んでいない。米上院は21日に2013年度国防授権法案を採択し、米国は日米安全保障条約の第5条に基づき、日本防衛の義務があると再確認したが、米国の戦略バランスにおいて日本はただの「コマ」にすぎない。そのため米国は日本の出すぎた行動をけしたてはするものの、戦後に形成された秩序を崩す気はまったくない。あまりに過激な日本は米国も望んではいない。米ウォール・ストリート・ジャーナル(電子版)は23日、日本に軍事対抗回避を呼びかける文章を発表した。
ただ、安倍氏の軟化は一時的なもので、その目的は来年夏の参院選勝利のためとの見方もある。自民党は衆議院で過半数を獲得したが、憲法改正には衆参両院で議員の3分の2以上の賛成が必要だからだ。
◇政冷経冷