3・11の大地震発生時、当時の菅直人首相はこの緊急事態を前に狼狽し、その不適切な対応に日本国内から批判を浴びことになり、退陣に繋がった。しかし、現在は当時ほどの緊急を要する局面でもなく、安倍内閣には解決の時間が十分与えられているにも関わらず、なぜ依然として改善が見られないのだろうか。
その根本的な原因は、安倍氏が国民の喝采と政治的支持を得るため「愛国劇」を繰り広げ、「島争い」(中国との釣魚島問題、韓国との独島問題、ロシアとの北方領土問題を含む)や「戦闘準備」に専念し、「事故の主な責任は東京電力にある」として「福島」問題を眼中に入れなかったことだと筆者は考える。
しかし、現状からも分かる通り、東電だけの力に頼っていては問題の解決はできず、日本政府がしっかりと主導し、国内外の専門家とともに研究、対策を講じる新らたな体制を構築していかなければならない。また、海洋の観測を強化し、汚染海域への監視を徹底し、その観測結果を公開しなければならない。これらの作業は東電だけにできるものではない。政府が責任を一企業に押しつけ、命を犠牲にして現場で働く作業員に押し付けることは無責任に他ならない。こうした状況は、自身の政治利益だけを顧み、国民生活および国際社会を顧みない安倍氏の自己中心的な態度の表れでもある。こうした実態はより多くの日本国民が知るべきであり、「愛国」と銘打って「害国」をもたらす政府の手法は国民の支持を得るべきではないはずだ。
いずれにせよ、今「福島は日本ないしアジア太平洋地域が最も重視すべき「島」」なのである。(作者:馮昭奎 中国社会科学院栄誉学部委員、海外網コラムニスト)