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だが、今の中国はそうではない。少なくとも、中国は当時のソ連のような軍事帝国主義を振りかざしてはいない。中国古代の兵法家である孫子は、軍事力よりも、心理戦で負けない知恵を持つことが大事であると強調している。アジア覇権を目指す上で、中国は今も孫子の理念の影響を大きく受けているようだ。
それよりも重要なのは、中国が30年も前から自給自足の経済政策を放棄していることである。今では中国とアジア諸国の経済関係は強固なものになっており、誰もがこのような関係がこのまま続くことを願っている。中国が世界の工場として位置付けられたことにより、タイ、マレーシア、インドネシア、シンガポール、台湾、韓国、日本など、アジア諸国で作られた材料や部品が中国に集結することになった。また、中国のWTOの加盟により、アジア全体の先進的な生産ネットワークが中国と結びつき、それにより各国がそれぞれ利益を得るようになった。
アジア諸国が中国に脅威を感じる原因の一つが、中国の軍事力の台頭である。だが、多く見積もっても、中国の軍事予算は日本の防衛予算と同じ水準である。中国の隣国であるインドとロシアの軍事予算を合わせると、確実に中国のそれを上回っている。それにインドネシアや韓国、また軍事近代化を進めている台湾を加えれば、中国の軍事予算をはるかに上回っていることは想像に難くない。また、ロシアとインドは核兵器を持っているが、日本も防衛体制を調整すれば、核の脅威に打ち勝つ能力を有している。