文=「軍事世界」誌編集長 趙楚氏
間もなく完工される中国初の空母
長い海岸線と多様な海洋権益を持ち、唯一空母のなかった大国、中国がついに空母を装備し始めた。海軍力の飛躍だけでなく、100年以来の国防近代化のシンボルとなるだろう。
空母はその国の軍事力において大きな意味を持つ装備であるだけに、その積極的な役割と同時に、空母を保有した国の反面の経験も振り返る必要がある。
◆日ロ、空母が大きな負担に
日本の空母「翔鶴」
20年代、第1次大戦後の軍拡競争の真っ只中にあって日本は英国よりも先に第1号となる空母を進水させた。しかし日本の空母開発に傾ける熱狂は国力や侵略政策を顧みない産物と化し、国家戦略の根本的な過ちから空母が国家安全保障の道具になるどころか、却って国家戦略のさらなる過ちを重ねることになった。空母艦隊がパールハーバーを襲撃して、米国との命をかけた決戦の火蓋が切られ、その結果、日本は明治時代以降からの侵略の「成果」をすべて失うこととなった。その国際政治の影響はいまだに後を引きずっている。日本は今でも国際社会の中で歴史のツケを支払わなければならない立場にある。
空母の建造と運用のもう一つの失敗例は、冷戦中の旧ソ連にみられる。60年代、キューバ危機に刺激され、本来、大陸軍主義の伝統を色濃く持つ旧ソ連が遠洋海軍の建設を決意する。それに膨大な国家戦略資源が投入され、壮大な空母建造計画に発展した。ソビエトが解体した際、その第三代空母がすでに1隻(現ロシア海軍の「クズネツォフ」)完成、2隻目(廃船体を中国が購入した「ワリャーグ」)が70%、艦載機が離陸するためのカタパルトを装備する第四世代空母「ウリヤノフスク」が30%完成していた。
戦前の日本と同じく、旧ソ連の空母発展計画も覇権を追及した拡張性の国家戦略の下で進められた。彼らの国家戦略は政治、外交、経済よりも軍事優先で、国家資源の投入が軍事力に偏りすぎていた。そのため、対外的には世界の敵とみなされ、国内ではカギとなる国家資源を消耗する結果となった。空母が国の発展を保障するのではなく、逆に大きな負担になってしまったのだ。
◆国家の安全は空母だけでは不十分