二、中国の対外貿易体制の改革と整備
改革開放以前、中国の対外貿易は指令的計画管理と国が統一して損益に責任を負うことになっていた。改革開放いらい、中国の対外貿易体制は指令的計画管理から市場メカニズムの基礎的役割の発揮、経営権の高度の独占から全面開放、企業が国の大釜で炊く飯を食べること(悪平等の分配制度)から自主経営と損益の自己負担へと転換を経ていった。中国の関税および貿易に関する一般協定(GATT)締約国の地位回復とWTO加盟を目指した交渉のプロセスで、さらに中国のWTO加盟後、中国の対外貿易体制は国際貿易のルールとちくじリンケージし、統一的で、開放的な、多国間貿易のルールに見合った対外貿易制度を確立していった。 改革開放の初期には、中国の対外貿易体制改革は主に単一計画管理体制を改革し、対外貿易管理と経営の権限を下部に委ね、外貨留保制度(取得した外貨の一定割合を公定為替レートで国家に上納し、残りを留保できる制度)の実施と外貨調節市場を設立することであった。外国投資者の直接投資を吸収し、外資系企業は新たな経営主体として対外貿易の分野に参入し、国有対外貿易企業の独占を打ち破ることになった。その後、中国は対外貿易経営請負制を実行し、指導的計画を用いることによって指令的計画がちくじ取って代わられていった。国際貿易の通用のルールに基づいて、輸出還付税制度を確立した。1992年10月に、中国は社会主義市場経済体制の確立という改革目標を明確に提起した。この目標に基づき、財政、税収、金融、対外貿易と外国為替体制の全面的な改革を行った。1994年1月に、中国政府は輸出に対するすべての財政補助を廃止し、輸出入に関わる企業はすべて独立採算制に転換することになった。人民元の公定為替レートと市場レートが一本化し、市場の需給をベースに単一で管理のある変動為替相場制を実施することになった。対外貿易の経営分野では企業の株式会社化と輸出入の代理制を試行した。同じ年に、『中華人民共和国対外貿易法』が正式に公布、実施され、公平で、自由な対外貿易秩序を守るなどの原則を確立し、対外貿易の基本法律制度を打ち立てた。
1996年12月に、中国は人民元の経常項目での兌換が実現された。同時に、中国は何度も大幅で自主的な関税の引き下げを行い、割当額と許可証などの非関税措置を減らした。このような改革によって中国は、市場経済を基礎とし、為替レート、税収、関税、金融などの経済のレバレッジ効果を十分に発揮する対外貿易管理体制と調整コントロールシステムを初歩的に打ち立てた。 2001年12月11日に、16年間の交渉を経て、中国はWTOの143番目のメンバー国となった。WTO加盟の際の承諾に基づいて、中国は工業、農業、サービス業などの分野における対外開放を拡大し、貿易の自由化と貿易投資の利便化の推進を速めた。承諾を履行する過程の中で、中国は対外貿易の体制改革を深化させ、対外貿易の法律法規体系を整備し、貿易障壁と行政による干渉を減らし、対外貿易管理における政府の職責を整え、政府行為のより公開、公正、透明を促進し、開放型経済が新たな発展段階に入ることを促した。 ――対外経済貿易の法制化の整備を速めた。WTO加盟後、中国は2300余件の法律法規と部門規則の整理を集中して行った。その中のWTO規則と中国のWTO加盟の承諾にそぐわないものに対して、それぞれ廃止または改正を行った。新たに改正した法律法規は行政許可のプロセスを減らし、それを規範化し、貿易促進、貿易救済法律システムを健全化し制定した。WTOの『知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(TRIPS協定)』に基づき、中国は知的財産権関連法律法規と司法解釈に対して改正を行い、体系が完備し、中国の国情に符合し、国際慣行とリンクした知的財産権保護の法律法規システムをほぼ形成した。 ――さらに関税を引き下げ、非関税措置を削減した。WTO加盟の過渡期に、中国の輸入商品の関税総レベルは2001年の15.3%から2005年の9.9%までしだいに引き下げられた。2005年1月までに、中国の圧倒的多数の関税削減の承諾・執行が完了した。承諾に基づき、中国は2005年1月から424の関税コード製品の輸入割当、輸入許可証と特定入札募集などの非関税措置を取り消し、国際公約およびWTOのルールに基づいて、生命の安全を保証し、環境を守るために輸入管制を実行する製品の許可証管理にしか留保しなかった。
2010年に、中国関税総レベルは9.8%まで引き下げられ、その中で農業製品の平均税率は15.2%、工業品の平均税率は8.9%まで引き下げられた。関税譲許率は2005年以降一貫して100%を維持している。 ――対外貿易経営権を全面的に開放した。2004年に新たに改正された『中華人民共和国対外貿易法』に基づき、2004年7月から、中国政府は企業の対外貿易経営権に対して、審査認可制から登録・登記制に改め、対外貿易経営者はいずれも法律に依拠して対外貿易を行えるようになった。対外貿易経営権の審査認可の撤廃は国有企業、外資系企業、民営企業の多様化した対外貿易の経営構造の形成を促進した。国有企業と外資系企業の輸出入が増え続けると同時に、民営企業の対外貿易の発展も進み、輸出入市場のシェアも拡大し続け、対外貿易の重要な経営主体となっていった。2010年、国有企業、外資系企業、民営企業の輸出入はそれぞれ中国の輸出入総額の20.9%、53.8%、25.3%を占めるに至った。 ――サービス市場の開放をさらに拡大した。中国はWTO加盟の承諾を着実に履行し、国外のサービス関連企業に金融、電信、建築、代理販売、物流、観光、教育などを含む広範な市場参入の機会を提供してきた。WTOのサービス貿易分類の160におよぶ部門のうち、中国は100部門を開放し、開放範囲は先進国の平均レベルにすでに近づいている。2010年に、中国のサービス業において新たに設立した外資系企業は1万3905社、実質利用外資額は487億ドルで、全国非金融分野で新たに設立した外資系企業と実質利用外資額の比率はそれぞれ50.7%と46.1%を占めるに至った。 ――より公平な市場競争の環境を整備した。中国は公平な貿易法律制度と法律の執行、監督メカニズムを整備し、完全なものにすることを通じて、対外貿易経営における権利侵害、ダンピング、密輸、市場秩序のかく乱などの不公平な貿易行為を抑制し、取り締まり、国内外の企業にゆとりのある、公平で、安定した市場環境を提供するよう努めている。
中国政府は国内の法律と国際貿易の規則に基づき、予報・警報・モニタリングを強化し、同時に貿易救済と反トラスト調査などの措置を利用し、貿易パートナーの不公平な貿易行為に対して是正を行い、国内産業と企業の合法的権益を守っている。世界金融危機に対応する過程の中で、中国は国際社会とともにいかなる形の貿易保護主義にも断固反対し、WTOの関連規定を厳格に遵守し、経済刺激プランの実施時においても国内外の製品を平等に扱い、国内外の企業の公平な競争を促した。 2010年までに、中国はWTO加盟における承諾内容のすべての履行を完了した。中国が承諾内容を真剣に履行した実際行動はWTOの大多数のメンバー国に認められた。2006年、2008年と2010年に、中国政府はWTOの貿易政策審議を3度受け入れた。WTOが提唱する無差別、透明性、公平な競争などの基本原則は中国の法律法規と関連制度にすでに溶け込んでいる。市場意識、開放意識、公平な競争意識、法治精神と知的財産権の概念などは中国において人びとの心に深くしみ込み、中国経済の開放と市場経済体制の整備をさらに促している。