文=コラムニスト・陳言 | 勝又依子(翻訳)
茨城県日立市内にある日立製作所の事業所は、3月11日の大地震で大きな被害を受けたが、3月29日にはすでに操業を再開している。
「日立事業所が被災した際、我々はまず従業員を帰宅させ、家の状況や家族の安全の確認をさせました。それから工場の設備や生産ラインの復旧に向けた準備を始めました」
日立製作所の常務、斉藤裕さんはそう言った。
日立市内に勤務する従業員のうち、軽傷者および住居の被害が比較的大きかった従業員が数名いたが、従業員の家族は皆無事だった。会社はまず従業員と家庭の状況を確認して初めて、自社の設備や生産ラインの被害状況を確認することに集中できたとのこと。
「従業員自身の健康や家庭に不安があっては、会社として震災復興、生産復旧に取り組むことはできませんからね」
斉藤さんは重ねて言った。
震源から遠くない日立市が受けた打撃は大きく、設備の修復や生産ラインの復旧には比較的長い時間がかかると思われたが、日立製作所は半月あまりの時間でそれを成し遂げている。
「日立製作所はお客さまに様々な装置を提供する立場にあります。納品した装置に問題があれば、日立の従業員が365日、24時間体制で修理に駆けつけていました。日立の工場が被災してしまった今、我々はこれまで以上に一致団結して立ち向かっているのです」
危機管理に対する日ごろの備えと経験が、今回自社の被災復興に生かされている。