奥井禮喜氏:春闘、もう一つの見方

奥井禮喜氏:春闘、もう一つの見方。 日経新聞社説(3/18)、いわく「《春闘》と決別し賃金改革の議論を深めよ」。経営者の新聞を自認する経済新聞だから、「経営環境の変化から取り残される」という危機感は理解する。ただし、「企業の成長を促す賃金制度づくりを急ぐとき」という主張は、言語明快意味不明でしかない…

タグ: 労組 春闘 経営者 労使関係

発信時間: 2012-03-19 16:33:24 | チャイナネット | 編集者にメールを送る

「成果に応じた賃金」だという看板を掲げたけれど、率先して成果主義を導入し、社長以下反省したF社をはじめとして、成果主義賃金で経営の元気が出たなんて話は聞いたことがない。

「労組は春闘によらず賃金を引き上げる道を考える必要がある」とも主張する。いわく「社員の意欲を高め、人材を採りやすい賃金制度にして」云々。あたかも人材採用がやりにくいような話だが、1990年代後半から一貫して労働市場は買い手市場であって、好き放題やっているではないか。

成果主義で、社員を「ぼやぼやしとったら放り出されるぞ」と暗黙の恫喝をし、雇用調節を非正規社員で都合よくやり、いまや非正規社員が全労働者の40%にもなっている。

なおかつ、長時間労働はまったく改善される見通しがない。有給休暇なんてあるの、というような雰囲気が漂い、残業しても時間を計上しない(させない)、不払い労働も改善されるどころか定着しているではないか。

賃金交渉というものは、どんな形で展開するにせよ、コストとしての賃金である以上、団体的労使関係においてきっちり約束しなければならない。また個別労使関係(働く人各人)においては、労働力を賃金と交換するのだから、それが納得づく対等取引になるように労使で確認せねばならない。

いまの個別労使関係においては、前述のような無法状態(法律が遵守されていない)を見過ごすわけにはいかない。労働市場が買い手優位であり、なおかつ雇用不安が大きい事情において、賃金制度をちょっとやそっとつついた程度で働く意欲が湧くものか。

敗戦後の民主主義においては、明確に「働かせていただくのではない、働くのだ」という勤労権が確立されたはずであった。しかし、現実の職場労働事情は、まったくそれとは違っている。極言すれば封建時代の「働かせていただく」状態に後退しているではないか。

社説で支持できるのは「定年後再雇用者の処遇引き上げ」「パート賃金引上げ」に触れた部分である。これは賛成だ。

最後に一言、こんな調子の春闘で、こんな調子の労働事情であるにもかかわらず、働く人々が隠忍自重しているのはなぜか。《制度》ではなく、働かせ方・働き方の根本に立ち返ってみたいではないか。

奥井禮喜氏のプロフィール

有限会社ライフビジョン代表取締役

経営労働評論家

日本労働ペンクラブ会員

OnLineJournalライフビジョン発行人

週刊RO通信発行人

ライフビジョン学会顧問  ユニオンアカデミー事務局

1976年 三菱電機労組中執時代に日本初の人生設計セミナー開催。

1982年 独立し、人と組織の元気を開発するライフビジョン理論で、個人の老後問題から余暇、自由時間、政治、社会を論ずる。

1985年 月刊ライフビジョン(現在のOnLineJournalライフビジョン)創刊。

1993年 『連帯する自我』をキーワードにライフビジョン学会を組織。

2002年 大衆運動の理論的拠点としてのユニオンアカデミー旗上げ。

講演、執筆、コンサルテーション、インターネットを使った「メール通信教育」などでオピニオンを展開し、現在に至る。

高齢・障害者雇用支援機構の「エルダー」にコラム連載中。

「中国網日本語版(チャイナネット)」 2012年3月19日

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