5)難易の尺度
当初は主として介詞構造を含む文を難度の高い文としたが、その後、添削を続けるうちに「学習者が何を難しいと感じ、また何処で間違えやすいか」が次第に明らかになり、それによって易しい文、難しい文の尺度も変化していった。学習者が難しいと感じる原因には少なくとも以下の諸要素がある。
①中国語は字が一定間隔で並んでいる。したがってどれが単語かが見分けられない。
例:发展中(発展の中で)
发展中国(中国を発展させる)
发展中国家(発展途上国)
②中国語は形態変化がないため、品詞の区別が難しく、文の成分の判別も難しい。
例:科学发展→「科学が発展する」か?それとも「科学的発展」か?
③構文を知らない。
例:“要~,要―――''は「~しようとするなら,―――しなければならない」
④論説体独特の文法や修辞法を知らない。
例1:“的”の省略。書き言葉の場合,短いフレーズの中に複数の“的”を用いることを非常に嫌う。したがって、“的"が複数ある場合は最も重
要な1つを残し、他は省略する。標語や法律名などになるともっと極端で、全く“的”を使わない場合もある。
「邓小平建设有中国特色社会主义理论」
(鄧小平の中国的特色を持った社会主義を建設するという理論)
例2:リズムを整えるための4文字化に使う様々な小道具→“加以”“得到”など。
⑤ある語彙についての先入観による誤訳。
(ア)日本語と同一表記のため、日本語の意味で解釈してしまう。
例:“部署”をすべて「部署」と名詞に訳してしまう。動詞である可能性を考えていない。
:“协议”を「協議」と訳してしまい、「合意」「協定」という訳語が出ない。
(イ)既習語彙の場合、前出の意味で解釈し、他の意味を考えない。
例:“会”を「できる」、“不能”を「できない」と訳し、「~のはずだ」
「~してはいけない」という訳語が出ない。
⑥時事用語を知らないためわからない。
例:“基地”はアルカイダ
⑦社会の事象に対する知識か欠けているためわからない。