◆誤解
資料写真:福島原子力発電所
ある程度の時間がたったことから、福島の放射能漏れ事故は人びとの視線から消え去ろうとしているようだが、実は、面倒な問題は始まったばかりなのである。『中国経済週刊』が伝えた。
中国人の賠償問題に対するいらだちは、その大多数は人道主義援助への関心のために抑制されたが、むしろ最近の衝撃的なニュースによって火がつけられたのである。巷に広く伝わった情報は、日本政府が「原子力損害についての補完的補償に関する条約」(ブリュッセル条約)の批准を考慮中だということだ。こうすれば、中国や韓国の公民が自国の裁判所で日本政府及び東京電力を相手に賠償訴訟を起こす前に、案件の管轄権を日本本国の裁判所に限定させることができる。
そこにある言外の意味は、条約批准前は、中国と韓国両国国内の裁判所が賠償訴訟に対する管轄権を有するが、条約が日本で発効すると、条約の規定から、管轄権は日本国内の裁判所しか行使できなくなる、ということだ。
仮にブリュッセル条約に多少でも理解があれば、公衆の間に広く蔓延している懸念は完全に一種の誤解であることが分かるだろう。
国際法は、条約が国家のために義務を創設できるか否かに関して非常に重要な原則を有している。即ち、条約は第3国無損益の原則にある。通俗的に言えば、つまり、条約の非締約国が明確に同意しなければ、条約は非締約国の権利にいかなる制限をも加えることはできないのである。原子力損害賠償に言及する国際条約はこのほかに、「原子力損害についての民事責任に関する条約」(ウィーン条約)がある。上述した2つの条約では、いずれも原子力施設のある国の裁判所の排他的な管轄権のルールが確立されている。だが問題は、中韓両国がこれまで上述の条約を批准したことはなく、日本政府が批准するか否かはわれわれとどんなかかわりがあるのか。
従って、結論は簡単である。仮に中国国民の賠償請求権が存在するとすれば、この種の権利は存在し続け、日本政府が条約を批准したことで影響あるいは制限を受けることない。仮に中国の裁判所が賠償訴訟に対し管轄権を有しているとすれば、この管轄権も影響あるいは制限を受けることはない、ということだ。
◆賠償請求権はどこから