さて、今回のTPP参画への日本国内の議論は、非常に良いものだったと思います。マスコミも珍しく、本気で「色」がでていました。そしてマスコミは中庸でなく、社会の特定層・あるサイドの地位に立脚した政治的立場を持っている、ということをある程度の国民のみなさんが再認識する機会となったと思います。学識者、各産業界、マスコミ、政治家、そしてソーシャルメディアがそれぞれの立場で議論をする良い機会になったはずです。「参加か、不参加か?」という結果の二値的な議論も、僕も含めて多くの日本の国民にわかりやすいものであったでしょう。
僕が思うのは、こういった議論が日中関係というコンテキストにおいて盛り上がってくれると良いなということです。以前、鳩山由紀夫首相時代に「東アジア共同体構想」というものがありましたが、あれは実行可能性に乏しく、また目指すべきものがわかりにくいものでした。そのため、「推進か、非推進か?」議論の前に「ポシャって」しまったものです。
こうした国民全部が考える機会となる議論は、難しい所から始めるべきでなく、より具体的には、「政治主体」の枠組みではなく、もっと「経済分野」「一部の産業分野」での枠組みのほうが良いでしょうね。今回のTPPの問題は、経済分野での議論であったものの「日米関係の問題まで日本国民が議論するようになった」という意味において興味深い事象でありました。
ですから、僕は双方のチャネル・窓口が殆ど無い、日中関係においてこうした議論が日本国内におきることは今後重要だと思っています。そして、それは国益が真っ向から対立するような領土問題のように、結論がハッキリとしすぎていないものであるべきでしょう。