「----同盟を結ぶという慣習自体がそもそも始めからいけない。けちな山や川のために国土が離れ離れになっているからといって、まさかその国民たちが人間性という絆で一つにならないわけでもあるまいし----同盟などというものがあるために、かえって国民同士が生まれながらお互いに仇であり敵であるというような錯覚を持つにいたるのである。----人間本来の友愛の精神こそもっとも強固な同盟に他ならない。」(ユートピア)
国交正常化40周年の日中関係が冴えない。なんでもかんでも日中交流を加速化せよと注文するつもりはないが、わざと紛争の種をばら撒き、それがあたかも憂国の士であるかのような態度を取る人は傲慢不遜である。
人間は八つ当たりする生き物である。面白くもないご時世には、それを巧みに突くキツツキみたいな扇動者が登場する。それに乗せられてしまうか、悪意を見抜いて踏み止まるか。ここが大事だ。
領土問題などは乾燥しきった藁みたいなもので、すぐに燃え上がりやすい。不幸な人はとりわけうっぷん晴らしをやりやすい。攻撃対象ができれば我を忘れてのぼせ上がる。
メディアはのぼせ上がった塊が恐ろしいから、国益の看板のもとにとかく国内迎合的記事をじゃんじゃん書く。火に油を注ぐ。自省・自制してもらいたい。日中両国メディアは相手国を叩くのでなく、問題の建設的進展のために世論に訴えてもらいたい。
特効薬がないから日中両国が尖閣問題を棚上げしてきたのである。今回の扇動者の行動は事態を悪化させる悪意であり、その流れに竿差すのでは本末転倒である。きちんと交渉せず内向き・批判合戦するのがもっとも悪い。
ルネサンスと宗教改革の二大思想が中世の思潮と激突し、まさにその渦中からヒューマニズムの近代人が台頭した。単なる人道主義ではなく、現状に対して懐疑し自省する精神と、人間探求のために理想を掲げて挑戦し続ける精神がルネサンスの金字塔である。
すべてが人間から始まる。すべては人間精神の所産である。その精神・自我は社会的自我でなければ民主主義が成立しない。民主主義はつまるところ国境を超えるものである。日中共にアジアの平和建設に貢献しよう。
「中国網日本語版(チャイナネット)」 2012年7月17日