意見その4 南京大虐殺は事実だが「合法な殺戮」であるとする「戦時国際法上合法説」
日本には「合法説」を唱える学者も居る。殺戮が合法と言う考え方は現代の世の中のどのイデオロギーにおいても受け入れられないことである。それにもかかわらず、法的根拠を持ち出して、南京大虐殺は日本軍の合法的な行為であると主張する学者がいる。
彼らはまず大虐殺の被害者は戦争捕虜だけだったと位置づけ、一般市民の被害については、軍服を脱いで市民に紛れ込んだ「便衣兵」の捜索の際に誤って殺したと主張している。捕虜の殺害についても、彼らによると「合法」である。例えば、日本の有名な右翼派の学者である亜細亜大学の東中野修道教授、上智大学の渡部昇一教授、東京大学の藤岡信勝教授などがこの説を支持している。
ところが、このような考え方は紛れも無い解釈間違いである。まず、南京大虐殺の被害者の大多数は軍人ではない一般市民である。次に、指揮官が逃亡し指揮系統が崩壊した部隊の兵士は軍人ではないので戦争捕虜の資格はないというのも理屈に合わない。戦争中であれば、上層部と部下の連絡が途絶えてしまうことは十分あり得ることで、このような時だけ指揮系統を失っても、部隊の兵士は軍人であるとするのは正に屁理屈である。そして、「便衣兵」という言葉は、欧米諸国が「ゲリラ」を指す時に使う概念である。その条件は一般的な市民の服を着ており、他国の軍隊に対して積極的な攻撃行為を行なっていることである。死から逃れるために武器を捨て市民の服を着て安全区域に紛れ込んだ、南京の中国兵士の状況には全く当てはまらない。完全に意味を取り間違えているのだ。
実際のところ、日本の学者達が言っている研究と言うものはただの「文字遊び」に過ぎない。条約で定められていようが法律で規制されていようが、日本軍が南京で行なった捕虜と市民の殺戮行為は人類の倫理に反する重罪である。南京大虐殺の罪の根源は日本軍が人間の基本的な道義に反したことである。これこそ、条約や法律をどんなに巧みな言葉で捻じ曲げようとも変わらない真実なのだ。
上記で述べた以外にも、日本には「戦時集団発狂説」や「南京を敵の手に渡さない為の集団自殺説」などがあるが、影響力が無く、一般的には受け入れられていない考えなので、ここではあえて取り上げない。
一人の勇敢な中国人