重慶市から165キロ離れた大足県の域内に、唐の末期から宋代にかけての石刻が40カ所、石像が5万体もある。そのうち北山と宝頂山の2カ所は規模が最大で、内容が最も豊富、芸術性が最も優れ、「芸術の宝庫」とたたえられている。唐の末期の景福元年から北山で石窟を掘削して仏像を彫りはじめ、250年をかけて南宋の紹興年間に竣工した。彫塑は主に仏教とかかわりのある人物や仏の経典の物語を取り上げたもので、最もすばらしいのは「心神車窟」である。洞窟の中央に透かし彫りの八角柱で作った心神車があり、法輪がいつまでも回ることを象徴するだけでなく、石窟を支える役割も果たしている。真中にはお釈迦様の像、両側には文殊菩薩と普賢菩薩を始めとする20体ほどの塑像がある。普賢菩薩の像は輪郭が最も柔らかく、姿が最も美しい。美しい東洋の女性の形に模して造られ、面立ちがきりっと美しく、肌がきめ細かく、やさしくて端正荘重に見えるので、「東洋のビーナス」とたたえられている。宝頂山の石刻は800年前、宋代の名僧趙智鳳によって70年がかりで掘り開かれたもので、みなぎる気力は観光客を驚嘆させている。宝頂山の周りには石像が1万体もあり、主に大仏湾に集中している。大仏湾は川が曲がる所で、奥行があって馬蹄形を呈し、長さ500メートル、岩石の高さ15〜30メートル、多くの大型彫塑は岩石の壁や石窟の中にあり、緊密につながっていて、大変壮観に見える。ここの彫塑は最も精緻に造られ、最も完全に保存されているので、中国石刻芸術の宝庫の中のさんぜんと輝く珠玉となっている。1999年に国連のユネスコによって『世界の文化遺産』に登録された。
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