黄竜風景名勝区


  竜風景名勝区は1992年に自然遺産選抜基準N(III)に基づいて『世界遺産リスト』に組み入れられたものである。
 黄竜風景名勝区は中国西部の四川省阿壩チベット族・チャン族自治州スムパン県に位置し、海抜は3000メートル以上で、中国の地理的位置が最高の風景名勝区の一つである。風景区は黄竜景観区とムニ溝景観区からなっている。言い伝えによると、大昔の頃、夏(前2033-1562)の禹が治水をすすめた時、岷江の上流に暮らしていた黄竜真人はかつて禹に協力して長江、黄河、淮河、済河の治水を行い、治水に成功してから二道海に戻ってひっそりと暮らし、のちに白ジカに乗って今の黄竜といわれているところにたどり着き、山の洞窟(現在、黄竜洞と呼ばれている)の中で修行をし、明代(1368-1644)にここに黄竜寺を築造し、これによって黄竜真人を祭った。このため、ここは「黄竜」という名がつけられた。黄竜風景名勝区は三大地質構造の接点にあり、地理的状況は非常に複雑である。風景名勝区の総面積は1340平方キロ、域内には雪に覆われた山峰が立ち並び、海抜5000メートル以上の山峰が7カ所もあり、そのうち、岷山の主峰である雪宝頂の海抜は5588メートルにも達している。黄竜風景名勝区はユニークな溶岩の景観で世に知られているばかりでなく、豊かな動植物資源も世界によく知られ、「世界の奇観」、「この世の瑶池(神話の中で西王母が住んでいるといわれるところ)」といわれ、貴重な自然遺産となっている。
 黄竜地域の地形の全般的特徴は雄大なスケールを誇る山があり、険しい峡谷があり、具体的に言うと、角のような山峰が立ち並び、刃物のような尾根が縦横に存在し、深い峡谷があり、険しい断崖があり、枝の形を呈した川の源流の南部区間はまっすぐな流れとなっており、北区間は曲がっているというものである。黄竜の高いところは海抜1700-5588メートルの範囲内にあり、山峰と谷との相対的な高度差は一般に1000メートル以上であり、3700-4000メートル以上のところの多くは氷に浸食された地形で、勢いがあり、雄大かつ壮観である。黄竜にはドカースト峡谷がたくさんあって変化に富み、険しい断崖と山峰があり、水の景観も豊富多彩で、植生が豊かである。谷底の形態によって色分けすれば、タンウンカースト渓谷、ザガ鈣華(水中のカルシウム・マグネシウム塩が適宜な水温にぶつかって堆積して形成した粒状の堆積物凝固体)森林峡谷と二道海鈣華畳湖峡谷など数種類に分かれている。黄竜領内の涪江(川)の源流は一本の主流から東西方向へそれぞれ木の枝の形のように広がる水系であり、上流の河床は広くて平坦で、下流の峡谷は深くて曲がりくねり、南側の支流は平らでまっすぐに並んでおり、北側の支流は曲りくねって並んでおり、上流は広く、下流は深く、南区間はまっすぐで、北区間は曲がっているユニークな川の源流の景観を形作っている。
 黄竜風景名勝区は雄大なスケールを誇り、種類もまちまちで、奇異な構造をしており、色彩が豊かかつ鮮やかな地表鈣華の景観を主要な景観とし、中国の風景名勝区の中で独自の旗じるしを掲げ、中国ではまたとない景観となっている。黄竜鈣華景観は種類がよくそろい、鈣華池、鈣華砂浜、鈣華扇子、鈣華湖、鈣華沈下湖・穴および鈣華滝、鈣華洞窟、鈣華泉、鈣華台、鈣華盆栽などがあり、天然鈣華博物館と言える。黄竜溝は延々と続く鈣華が分布している区間は3600メートルにも達し、最も長い鈣華砂浜は1300メートル、最も広いところは170メートルに達している。彩色豊かな池は3400カ所にも達し、岸としての最高の堰堤は7.2メートルに達し、ザガ鈣華滝の高さは93.2メートルに達している。これらのものは中国においても、世界においてもまたとないものである。風景区の広大な炭酸塩地層において、鈣華という奇観は黄竜溝、ザガ溝、二道海など4つの峡谷の海抜3000-3600メートルの区間にしか分布していない。そして、黄竜溝、二道海、ザガ溝はそれぞれ鈣華の近代における形成期、衰退期と脱変期の後期にあり、鈣華の発展・変化の過程についての研究のために良くそろった資料となった現場を提供している。これを見てもその貴重さが分かる。鈣華体の形成過程において、日照によって、池の水が同じ源からきたものでありながら、色合いはまちまちで、色とりどりの「彩色の池」を形成し、黄竜風景区の麗しい大景観区の一つともなっている。
 著名な黄竜溝は岷山の主峰である雪宝頂を後背に控え、上は「彩色の池」に接し、下は涪江の源流――涪源橋に臨んでいる、南から北へとだんだん盛り上がる、長さ7.5キロ、幅1.5キロの鈣華体の尾根である。溝内には薄い黄色の岩石に覆われており、遠くから眺めると、密林と深い谷の中を延々としてつながり、頭を挙げると水しぶきを飛び散らす黄色の竜のように見えることから、黄竜溝という名を得た。黄竜溝はその「奇異な、この世の冠たる、美しくて、奥深い」自然景観で国内外にその名を馳せている。黄竜溝は地元で各民族の人々に尊ばれ、チベット族の人たちはそれを「トンリ・ソルジュン」と称し、その意味は東方のほら貝の山(雪宝山のことを指す)、こがね色の溝(黄竜溝のことを指す)である。このため、1年に一回の盛況を目にすることができる、北西地域の各省・自治区の諸民族の人々が大勢参加する山から山へとたらい回しされる縁日が今日まで伝えられている。
 黄竜地域は海抜が3000メートル以上で、はっきりとした第四紀氷河の跡が広く成育しており、そのうち、岷山の主峰である雪宝頂地域は最も典型的である。その特徴として、さまざまな種類のものがそろい、密集して分布し、最も東側に近いところにある。雪宝頂地区は岷江と涪江との分水嶺でもあれば、二つの川の源でもある。この地域は山が高くて広く、山峰が立ち並び、5000メートル以上の山峰だけでも7つもあり、そのうち、雪宝頂(5588メートル)、雪欄山(5440メートル)と門洞峰(5058メートル)の3本の近代氷河が成育しており、中国の最も東端の近代氷河保護区となっている。主な氷浸食の跡には角峰(海抜4000メートル以上)、刃脊(3800メートル以上)、氷に浸食された堰塞湖(3900メートル以上)などがあり、主な氷磧(氷の河原)地形は終質、中磧、側磧、底磧などに分かれ、それぞれの氷河峡谷の中に分布している。近代氷河と古代氷河の跡と鈣華との間の関係などは科学研究の面でいずれも重要な価値を持つものである。
 ムニ溝景観区はソンパン県政府所在地の南西部から11キロ離れたところに位置し、主として原生の森林地域である。ここには高さ約104メートルの階段式の鈣華滝――ザガ大瀑布があり、中国最大の鈣華滝である。二道海はムニ溝景観区の北部区間であり、天鵝湖、百花湖、犀牛群湖などの景観がある。ムニ溝景観区の南端には水温21℃の医療用ミネラルウォーターの湖といわれる煮珠湖がある。言い伝えによると、これは仙人の黄竜真人が二道海で暮らし、まだシカに乗って黄竜に移り住んでいなかった時に、天宮の仙女たちのために病気を治し、美容の術を施した場所であった。百花湖の横には神秘で壮観な「九天玄宮」といわれている溶岩洞窟があり、洞窟の中の鍾乳石は数え切れない天然の像を形成し、非常に美しい。
 黄竜風景名勝区にはまた貴重な動植物資源がある。区内には高等植物が1500種以上もあり、そのうちの多くは中国特有の種であり、国の1-3類保護植物に属するものとしてカラマツ、岷山モミ、独葉草、星葉草など11種類がある。多くの植物は重要な科学研究、薬用と経済的価値を持つものである。置かれた地理的位置が特異なので、黄竜にはパンダなどの野生の動物が生息、繁殖するための望ましい地域となっている。その特徴として、貴重で希少な動物の種が多く、中国南部の動物と北部の動物が混じって生息している現象が際立っており、そして地元特有の種もある。そのうち、動物は59種、鳥類は155種である。国の1-3類の保護動物にはパンダ、キンシザル、ヌー、雲豹、シロイクチビルジカ、腹部の赤いキジなど約100種がある。中国南部の動物と中国北部の動物が混じって生息している現象としては山星鳥が際立っている。

 

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