湖北省の武当山は著名な観光地であるだけでなく、道教の名山としても知られている。ここは山が高く、うっそうたる森に覆われ、風景が非常に美しい。72の山峰が主峰の天柱峰を取り囲み、洞窟、泉、岩と谷が山々の中に点在し、雲が険しい山峰と深い谷の上を浮遊し、まるで仙人の世界のようだ。伝説によると、武当の道教を信仰する真武大帝はこの山に生まれ育ち、ここで修業して得道して昇天したという。そのため、「仙人の故郷」であるこの山は昔から道を学ぼうとする人たちを引きつけている。武当の道教は武当派武術と深いつながりがある。道教の僧侶は得道するために修業すると同時に武術を学ばなければならなかった。武当派武術は身を守ったり健康を保ったりすることを目的とし、柔よく剛を制し、後から打ってでて相手を制する、というものである。「内家拳派」という独自の流派を形成し、北方の少林武術と共に有名である。武当山にはまた中国で規模最大の道教寺院の建築群もある。その建築は真武帝が山をつくり上げたという神話にもとづいて配置されたもので、権力と神権を結びつけようとする意図を示し、おごそかな雰囲気にみちている。道教は自然を崇拝しているので、その建築物も雄大な山や険しい崖、奥まった洞窟を利用し最もふさわしい場所を選んで合理的に配置し、周りの森、岩と谷川と融合させ、まるで自然にでき上がった景観のように見える。山の麓から天柱峰の頂上にある金殿に通じる道に黒石が敷き詰められ、長さ70キロもあり、「神道」と呼ばれている。両側には瓦礫と化した宮殿や寺も少なくないが、現存している建築物は雄大かつ精緻に築造されているので、称賛すべき所がたくさんある。1994年に国連のユネスコによって『世界の文化遺産』として登録された。
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