当時の日本との似通った点は取り組むべき課題
このような意見が挙がっているとはいっても、現在の中国と当時の日本にはやはり似通った点が多い。これらの相似点の多くが中国経済および社会の発展のために取り組むべき課題なのだ。
周林院長は「両者は多くの面で似通っている。特に、資産バブルに対する認識が非常に似ている。当時、日本の土地資産総額は米国の2倍に達していたにも関わらず、それが資産バブルの状態にあることを日本人のほとんどが認識していなかった。今、中国国内でも、住宅価格が今後も上昇すると思っている人が多くいる」と述べている。
周林院長はまた「管理を怠れば、本当にバブルが発生し、最後にはバブルが弾けて、金融機関の不良債権が表面化する。そうなれば、中国のこれからの経済成長に大きなマイナス作用をもたらすことだろう。マクロ政策を制定する際には十分に気をつけなければならない」と警告している。
天津港(集団)有限公司の於汝民董事長は、「今後10年の間に、日本のバブル崩壊のような局面が中国に発生するとは思えない。だが、過去30年間の経済成長モデルが今はもう通用しないのは確実である。中国は経済の転換期に来ている。次に、中国は現在、世界第2位の経済大国となっているが、ホンダ、日産、ソニー、東芝などといった国際的な市場競争力を持った企業に欠けている。第三に、関連専門家の予測によると5年後には中国の労働供給量は低下するはずで、それは当初の日本の状況よりも更に著しいものになるはずである」と慎重な意見を述べている。
龔方雄董事総経理は、「中国は今、南米の発展途上国が経験した“Middle Income Trap(中所得国のわな)”などといった問題が起こらないようにしなければならない。“Middle Income Trap”とは、一人当たりGDPが5,000米ドルに達すると経済成長が止まることを指すが、現在、中国の一人当たりGDPは4,000ドル前後と、その値が近付いている。また、中国は経済構造の転換および調整を迫られている」と述べている。