文=コラムニスト・陳言 | 勝又依子(翻訳)
野松先生の車はハイブリッドカーだ。
ハイブリッドカーは、日本でかつて使われていたMD(ミニディスク)やMO(光磁気)と同様に、本来は中国国内にマーケットがあって然るべきであるのに、それがないまま今に至っている。もともと中国国内に関連技術がなかったこと、政府が経済レベルでその開発を推し進めていなかったことが、上記のいずれもが中国に普及していない原因だろう。そしてハイブリッドカーがMDやMO以上に世界じゅうで大流行していたころ、中国だけはまだ蚊帳の外だった。
だから野松先生が一般消費者としてハイブリッドカーを選んだのは、私にとって軽い驚きたった。
現在、私の知人のうち何人かがハイブリッドカーを所有している。そのうちひとりは国立公園に勤める公務員だ。家はとても裕福で、彼女のお母さんはもともとヨーロッパの有名メーカーの車を買うように薦め、お金も一部出してくれると言っていたそうだが、彼女が最終的に選んだのは日本製のハイブリッドカーだった。
「国立公園の職員として環境保護に気を配らなくてはなりません。車を使わないのがいちばんですが、勤め先の公園がとても広いのと仕事で外出することも多いので、運転するならハイブリッドカーがいいと思いました」
と彼女は言った。公園の管理事務所の車も当然ハイブリッドカーであり、ためらうことなく同じタイプの車を自分用に選んだのだった。
もうひとりは大学の学長をしている。ある日大学のOB会のあいさつの席上、買ったばかりのハイブリッドカーも話題に取り上げ、そこにいた人たちに今後自家用車を購入するのなら、自分の車のようなハイブリッドカーがいいと薦めた。