元社長の1名は敬虔なクリスチャンだが、彼も日本の神に向かって一礼二拍手一礼して敬意を表したそうだ。神社内に神の肖像などはなく、木箱の上にお供えに用いる酒器2客と小皿2枚が置いてあるだけだ。奥には鏡があり、外光を反射させてうまく取り込んでいる。拝殿の前には日本語で「狛犬」と言う一対の像がある。その名は犬とついているが、中国の大きな建物の前にある獅子の石像によく似ている。
熊野神社は桜の名所でもある。樹齢百年近くのものも数本あるという。桜の樹齢が百年を超えることは珍しいそうだが、ここの桜は壮健そのものだ。
「茨城の桜は東京より1,2週間遅れて咲きます。満開の頃には花見客がたくさんやってきます。今年もそうでした」
鈴木さんは言った。地震の後でも変わらず咲いた桜――その桜を愛でる人も変わらずやってきた。桜の木をライトアップしたりその賑やかな参拝客に対応したり、宮司としての鈴木さんは桜の時期もとても忙しい。
鈴木さんは今回作業服姿のまま熊野神社を案内してくれた。おそらく祭祀など行事のときだけあの儒学者に似た正式な服装をするのだろう。
日本の某神社は中国人に特別な感情を抱かせているが、その他の神社は古来から地域や住民の生活に深く根付いている祈りの場所である。日本には三千以上の熊野神社があるという。その中には鈴木さんのように普段は別の顔を持っている宮司が少なからずいるのかもしれない。
「Billion Beats 日本人が見つけた13億分の1の中国人ストーリー」より
「中国網日本語版(チャイナネット)」 2011年6月12日