一方で日本での情勢をチェックしてみますと、多くのメディアで「加速する国際化」「産業空洞化」「リスク分散のため世界へ」といったような見出しが並び、日本の多くの企業が拠点を海外に移設していく予想が描かれていました。しかし、実際の所、日本政府部門としては「産業復興」が要であって、日本国内の産業が成長しないような企業の「純粋海外移転」に単純に賛同することはないでしょうし、また一部の大企業を除いて日本経済を支える中小企業がそれほど機動的に素早く海外に拠点を移すことができるとは考えられません。
311によっていくつかの地理的な代替のきくような産業セクターかつ、大企業だけがリスク分散のため、本意では純粋な経営効率化の良い機会ためであっても、311の大義名分を用いてIRを通じた投資家説得材料として、海外移転を検討してきた所と思います。ですから、先ほど述べたように、「中国にどんどん企業が来ます。」というような状態にはならなかったわけですね。
さて、こうした状況を簡単に分析し、今後の状況を考えてみましょう。
まず、対外FDI(海外直接投資)が日本国にとって良いか悪いか、受け入れ国にとって良いか悪いかを考えますと、産業の受け入れ国にとっては、日本の多国籍企業が国内に入っていきてくれることによって、内需も拡大し、雇用も生み出し、技術力も増加するわけですから、ほとんどの要素でポジティブな影響であると思われます。一方で日本国にとっては対外のFDIであり、最も危惧されるのはいわゆる「産業の空洞化」であって、「国内雇用の減少」であります。各個別企業からみればFDIによってさらなる経営効率化が図られるので、リスク分散の観点からも、コスト低減の観点からもポジティブな影響があるからこそFDIを行うわけですが、日本国全体の利益としては「ちょっと待って下さいよ」というような状態が発生する訳ですね。だから、政府部門も対外FDIについて単純な賛成ができないわけです。ただし、対外FDIによって日本国籍(日本資本)の企業が世界でさらにタフになり、日本は一時的には産業が空洞化すれども、長期的には日本に本社を置くそうした日本資本多国籍企業により、日本国内に対しては高利益率の産業バリューチェーンの一角の仕事を任されることに成り、日本の産業を長期的に、間接的により強く牽引するということも有識者の見解としてはあります。
ですから、対外FDIが増加する潮流については、国家全体として考えた場合には、日本国としては「良い面も悪い面もある」「何とも言えない」「判断がつきにくい」という状況と僕は考えます。一方で、アジア諸国としてはこれについてはその殆どがメリットであると考えます、だからニュースでも挙がるほど「超ウェルカム状態」なわけですね。
(パート2に続く)
「中国網日本語版(チャイナネット)」2011年10月4日