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しばらく前、日本を旅行しました。そのときに観光バスを運転してくれたスマートな運転手は、退職して再就職した人でした。きちんとした制服、言葉少なく、きめ細かなサービス、食事の際は襟を正して脇に座るなど、端正な挙止。あとで気づいたのですが、サービス業で活躍しているのはほとんどがこうした男性たちだということです。日本は高齢化社会、退職して再就職することはごく普通で、給料は少なくとも、退職した際の諸手当は少なくありません。このようにして、かなりの体力または高い学歴を要する仕事は若い人に譲りながら、高齢者夫婦が離婚しないようにしているのでしょう。日本では、男性は勤めを終えるとバーやカラオケに足を運び、家族と接する時間が非常に少ないと言われているそうです。そのため一旦退職すると、夫婦いずれもそうした環境に適応できなくなり、65歳以上の離婚率は一時、かなり高いときがありました。
日本のこうした経験は、高齢化社会に入りつつある中国にとってある程度、参考になるのではないでしょうか。
退職してから高齢を迎えるまで、社会的価値を生み出すことのできる時間は少なくとも20年はあります。聡明な社会はこの貴重な資源をいかに活用するかを学ぶべきです。退職後、大学受験の作文指導で第一人者となった公務員がいます。長年にわたり官庁の文書を作成しながら論文の精髄を汲みとり、さらに世事の最高水準とされるものに対する洞察を叙述文に採り入れた人です。「物事を書く叙述文では、人を書かねばならない、人を書く叙述文では、物事を書かねばならない、これを承知していれば、すべて0Kです」
彼の言葉をじっくり味わいますと、一生を「叙述文」に従事しようとする文学者としての私は、思わず冷汗をかいてしまいます。
わたしたちの社会は日本の社会とはまったく国情が異なります。でも、彼ら退職者はできることのできるすべての仕事に身を投じることができ、一方、社会も彼らに最大の熱意と支援をしているのです。これはわたしたちにとって学ぶべき価値があるのではないでしょうか。(文=江蘇省南京市の梁晴氏)
「中国網日本語版(チャイナネット)」 2012年1月9日